Interview
2025/12/17
「まさか先生とこんなところでお会いできるとは思いませんでした」
浅野圭亮氏(以下、浅野氏)が三浦健輔氏(以下、三浦氏)と再会したのは、仙台市青葉区若者社会参画型学習推進事業(以下、若者事業)<西公園ブランディングプロジェクト>の第1回定例会だった。中学時代に生徒と担任の先生という立場で共に中学校の校舎で過ごした二人が、約10年の時を経て、今度は『若者事業参加者』と『行政職員』として再会してともにプロジェクトを進めていく、そんな物語も実は始まっていた。
2025年4月19日にキックオフした本プロジェクトは、青葉区若者事業史上初となる産学官連携のもと動き出した。タッグを組んだのは、仙台市青葉区、株式会社BLUE SODA、そして東北福祉大学をはじめとする仙台市内の大学機関の三者。開園150周年を迎える西公園をブランディングすべく、若者が約2年間かけて主体的に取り組んでいる。その現場で再び出会った三浦氏と浅野氏。本記事では二人による座談会を通して、過去から結び続けている絆と今に生まれる新たな想いに迫っていく。

写真:左側から浅野圭亮氏、三浦健輔氏
実は、今回の再会は三浦氏が浅野氏に声をかけたところから生まれていた。
三浦氏:「彼の現在の活躍は知っていました。そこでぜひ一緒にプロジェクトに取組めたらと思って連絡してみました」
実は三浦氏は、浅野氏が中学を卒業してからも、その成長を見守り続けていた。きっかけは3年前、三浦氏が青葉区中央市民センターに異動した時だった。
三浦氏:「私がこの行政に異動するときに、彼が来てくれたんですね。『先生どうもありがとうございました』と来てくれて。その時、圭亮の年齢を逆算していったら三年後はもう二十一歳ぐらいだから、そしたら若者事業を一緒にできたらなというのはあったんです」
そして実際にプロジェクトが始まり、三浦氏と再会した浅野氏は安堵した。
浅野氏:「嬉しかったというか、ホッとしたみたいな。三浦先生と一緒にできるんだという安心感がありました」
浅野氏自身大人の前では「ちゃんとしなきゃ」と緊張する場面が多い中で、三浦氏の前ではありのままの姿でいられる。それは、中学時代から変わらない関係性があるからだ。三浦氏は今でも浅野氏を『圭亮』と下の名前で呼ぶ。「もう下の名前で呼ばれるのは三浦先生とか中学校の友達ぐらいしかいない」と浅野氏は笑う。その呼び方には、二人の特別な絆が表れている。
中学時代の浅野氏は、決して優等生ではなかったと自身で振り返る。
浅野氏:「結構中学校の時、勉強もできなかったし、中学校に対して前向きではなかったんです」
しかし、三浦氏の授業だけは違った。
浅野氏:「先生の社会の授業は楽しかった。三浦先生が担任の先生になってくれた時はやはりクラスは楽しかったから、勉強はできないけど中学校に行こうみたいな気持ちにはなれました」
三浦氏の印象は浅野氏にとってパワーをくれる先生だった。声が大きく、エネルギッシュで、教室にいるだけで元気になれる。そんな先生のもとで浅野氏は少しずつ変わっていった。一方、三浦氏から見た浅野氏は『負けず嫌い』な生徒だった。
三浦氏:「客観的に見ると非常に人の前に立つというか、一歩踏み出す勇気もありました」
浅野氏は学級委員を1年生から2年生まで務め、生徒会にも入り、最終的には生徒会長まで務めた。卓球部でも部活動に収まらず、自主練習を重ねる向上心の持ち主だった。そんな積極性が、三浦氏の目には強く焼き付いていた。
そんな二人の過去には、印象的なエピソードがある。三浦氏が今でも大切に保管している『まとまるくん』という消しゴムに関するエピソードだ。
三浦氏:「圭亮が中学校二年生のときに学級目標を決める際に、『まとまるくん』にしようということで、みんなに渡したんですよね」
10年以上経った今でも、三浦氏はそれを大切に持ち続けている。
三浦氏:「仕掛けも上手だし、アイディアも豊富だし。そういうふうにチャレンジ精神というのは非常に旺盛だなというのは当時からありました」

そして現在、2人は西公園ブランディングプロジェクトの一員として何回か定例会を重ねる中で、二人にはそれぞれ心が動いた瞬間があった。浅野氏にとっては、三浦氏のサポートが何よりも心強かった場面があったという。
浅野氏:「私の『やりたい』『こうしたい』を基本的に肯定してくれていました」
三浦氏が印象的だったのは、浅野氏が仙台市公園整備課へインタビューしている姿だった。その姿は三浦氏にとって、中学生の頃とは違う大人としての浅野氏の姿を見られたことが何よりも嬉しかったと語る。
三浦氏:「今年のプロジェクトの始まりに、圭亮へどのようにプロジェクトへ関わっていきたいか聞いた際に、社会と関わりたいと話していて、それがちゃんと実現されていると感じました」

写真:仙台市公園整備課へインタビューを実施する浅野氏
三浦氏は浅野氏の中に、時を経ても変わらないものがあるという。それは『挑戦心と向上心』である。
三浦氏:「圭亮は、個人で取組んでいる情報リテラシー教室の代表も務めているんですね。こうして幅広く活躍しているというのは、やはり変わらずチャレンジングであったり、アクティブであったりするなと思います」
浅野氏から見た三浦氏も変わらないモノがあるという。それは熱量だ。
浅野氏:「本当に熱い男といいますか、熱量がとにかく今もすごいなと思っています。やはりやるとなったからには昔と変わらずに全力で来てくれますし、そして周りの誰も置いていかずみんなを引っ張ってくださる先生ではあるなというのは変わらず思っています」
もちろん、新しく見えた部分もある。浅野氏は、三浦氏の『実現力』に改めて気づいた。
浅野氏:「いろいろ社会と関わることが増えてくるにあたって、やはり社会は甘くない部分もたくさんあると最近思っています。でも三浦先生はその中でも誰かがやりたいと行ったことを極力やはり形にしてくださる。しかも、それを三浦氏が一人で決めるのではなく、ちゃんと僕たちの意見も聞いてくださったうえで実現してくださる」
反対に、三浦氏が浅野氏に見た新しい力は『巻き込む力』だった。
三浦氏:「圭亮は想いが非常にあると思いますが、一人だと限界がくる瞬間がある。そこで仲間を増やしていったり、想いを共有していったりという部分では、人を巻き込みながらを波を起こそうとしているのが非常に素晴らしいなと思います」
浅野氏には、このプロジェクトを通じて実現したいことがある。
浅野氏:「西公園をいろんな人に知っていただきたい。せっかくなら西公園に来てほしい」そのためにはやはり、自分自身が西公園を知るのは前提だと思うので、まずは自分も行って、やはり学ぶこと。現場に行くことに取組んでみたいです」
三浦氏の願いは、「このプロジェクトの若者が考える西公園というビジョンをぜひ実現したい」というものだ。そこに加えて、三浦氏が大切にしていることがある。それは『学びの循環』である。
三浦氏:「プロジェクトを通して想いが通じ合うという良い循環ができると、仙台は今以上により豊かになるなというのはすごく思います」
最後に、浅野氏は三浦氏への感謝の言葉とともに決意を語った。
浅野氏:「中学校で出会っていないと、ここでも出会わなかったし、こんなに伸び伸びとしたことができていないので、中学校で三浦先生に出会えてよかったなという反面、やはりまだまだ僕も成長し続けるので応援していただけると嬉しいなとは思います。これからも頑張ります」

三浦氏も次のように応える。
三浦氏:「多分中学校の教員と生徒で、もっと色んな人と出会っている中で、圭亮が何かしら私と出会って感じたからこそ、多分再会できたと思うんですよね。そしてプロジェクトが終了しているこの先の未来でもまたお互いに再会した時に、あのプロジェクト最高だったねと。そうなると良いなと思います」
中学時代の教室で始まった学びが、10年の時を経て、今度は西公園という舞台で実践されている。その物語は、まだ始まったばかりだ。時を超えてつながった師弟の挑戦は、これから先も続いていく。
Text:Keisuke Asano
Photo:Kensuke Miura/Yuki Suzuki
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