Interview
2025/12/07
2025年4月、西公園ブランディングプロジェクトが始動した。150周年を迎える西公園の新たな価値を模索するため、現在30名を超える若者たちが集まっている。その中に、東北学院大学3年生の浅野圭亮氏(以下、浅野氏)と、宮城学院女子大学の教員である岩田京子氏(以下、岩田氏)がいる。就活を控えた学生と、今春仙台に着任したばかりの教員。公園の魅力を探す若者の視点と、まちづくりに関心を持つ大人の眼差し。世代を超えた二人の対話は、西公園の過去と未来をつなぐ糸口を探るものとなった。

写真:左側から岩田京子氏、浅野圭亮氏
若者事業に2年連続で参加した浅野氏は、今年の活動への参加理由を明らかにした。昨年度の経験を踏まえ、継続を検討していた折に、中学校時代の恩師であり、西公園ブランディングプロジェクトの担当者である青葉区中央市民センター職員、三浦氏から今年度の事業内容について連絡を受け、西公園を対象とする活動であることを知ったという。浅野氏は、前年とは異なる地域での取り組みが新たな経験につながると判断し参加を決めた。しかし浅野氏にとって西公園は、大学へ向かう車窓から眺める場所にすぎなかった。毎日通るけれど、止まることはない。友人と遊ぶなら仙台駅周辺のカラオケや飲み屋。わざわざ西公園まで足を運ぶ理由が見つからない。それが、プロジェクト参加前の浅野氏の実感だった。
一方岩田氏は、今年の春に初めて仙台に来た。他地域のまちづくりに関心を持ってきた経験から、仙台ではどのような取り組みが行われているのかを知りたいと考えていた。ちょうど大学で、西公園ブランディングプロジェクトが始まることを知り、学びの機会になるかもしれないと思い立ち、参加を決めたという。岩田氏はプロジェクトに参加する前、西公園という名前も知らず、話し合いの場に行くにあたって初めて西公園を訪れたそう。
2025年4月から始まったこのプロジェクトで印象に残っている活動について尋ねると、浅野氏は西公園の強みと弱みを洗い出すグループワークだと答えた。
浅野氏:「正直イベントがないと行かない、仙台駅から遠いという意見ばかりが出た。魅力があまり出てこなかったのが印象的だった。西公園だから行くとか、そういうのはなかなか出てこなかった」
また、大学や学年が違う人とグループになった際の盛り上がりを浅野氏は実感している。ブランディングプロジェクトという目的は共通して持っているが、それ以外の雑談も社交の場として意味がある。普段関わらない人たちだからこそ、様々な話で盛り上がり、そこからSNSを交換して交流を深めるというようなエピソードが生まれるという点もプロジェクトの魅力の一つであると語る。
一方岩田氏は印象に残っている活動としてフィールドワークを挙げた。フィールドワークの内容は、学生が西公園を歩き、偶然出会った利用者に話を聞くという取り組みで、「非常に興味深い実践だった」と岩田氏は振り返る。学生にとっては、自分自身の考えだけでなく公園を利用する人々の声を直接聞くことが新鮮であり、視点を広げるきっかけになっただろうと語る。岩田氏は、この経験をプロジェクトにとって重要なステップだと位置づけている。西公園の未来を考えるうえで、学生だけの意見で完結するのではなく、仙台で暮らす人々の声を取り入れながら進める姿勢が必要だと感じたからだ。『仙台の人と一緒に西公園を良くしていく』という意識が、フィールドワークを通して参加者に実感として芽生えたのだ。

写真:フィールドワーク実施時の様子
チームで活動する上で、二人が共通して大切にしていることがある。それは『傾聴力』だ。異なる視点を持つ人々が集まるこのプロジェクトでは、聞くことが新しい発見への入り口となる。
浅野氏:「せっかくいろんな意見が出ているので、新たな視点を取り入れたい。聞く態度は常に意識している」
大学ではどうしても友人同士の関わりに偏りがちだ。しかし社会に出れば、部署の仲間と一つの仕事に向き合うように、自分とはまったく関係のなかった人たちと協働していく場面が増えていく。だからこそ初対面の相手と、同じテーマについて話し合う経験は貴重だと浅野氏は感じている。
浅野氏:「大学の友達だけだと限界があるけれど、このプロジェクトでは全く違う背景の人と出会える。そういう場で意見を交わすことって、社会に出てからも必ず役に立つと思ったんです」
さらに、情報社会が進み AI を活用する場面が増えても、感情やコミュニケーション能力は人にしか持てないと浅野氏は続けた。自分の意見をきちんと伝えつつ、相手の言葉にも耳を傾ける。その双方向のやり取りこそが、対面での対話によって磨かれていく。AIにはできない、人の感情に触れながら意見を伝えること。その力はこのような場でこそ身につくのだと、他大学の学生との議論の中で浅野氏は学びの可能性を見つけていた。
岩田氏も続けてこう答える。
岩田氏:「他の人が言ってることをじっくり聞いて、自分の中で咀嚼するということを落ち着いてやるっていうのは大事な作業なんだろうなと思いますね。あとは仲間内だけで通じる言葉で片付けずに、もっと噛み砕いて、一般的な話として言葉や話題を一般化していく。それは大事なコミュニケーション方法だと思うので、ここはその練習の場なのかなという気はします」

写真:定例会の様子
西公園ブランディングプロジェクトの未来について夢を語ってもらった。
岩田氏は、仙台には西公園という静かで魅力と可能性を抱えた場所があり、その存在が人々の暮らしをつなぐ“かすがい”になり得ると感じている。西公園をきっかけに、仙台で過ごす日々がなんだか楽しいと思えるような再発見が生まれるなら、このプロジェクトはその第一歩になるかもしれない。そんな未来がここから動き出していけば素晴らしいと考えている。
岩田氏:「ここからさらに西公園界隈の人たちとつながっていく機会があればいいなと思う。泥臭くじゃないけど、実際に現場の人たちの意見に揉まれてみたいなっていうのを個人的に妄想しますね」
浅野氏は、西公園がもっと人の集まる場所になってほしいと感じている。
浅野氏:「我々も仙台に何か目的があってそこに行くので、やっぱり西公園を目的として来てくれる。それがイベントだけじゃなくて、日常的に常に人が来てくれるものに西公園としてはなってほしいし、我々がそのそうなるきっかけを若者や地域の人に伝えられるような、何か成果を出せたらなと思ってます」
そうした想いの延長線上に、このオウンドメディアの存在がある。西公園ブランディングプロジェクトの活動の一環でスタートさせたオウンドメディア『TIME MACHINE NISHI PARK』は、公園独自のメディアという類を見ない試みだ。西公園を中心にした記事を発信することが、若者や地域の人に西公園の魅力を伝える手段のひとつとなると浅野氏は考えている。若者が作るメディアが、世代を超えて届くにはどうすればいいのか。課題はあるかもしれないが、対話の中でこれからの活動につながる小さなヒントが確かに芽生えているようでもある。
活動していく中で感じた、岩田氏から見た学生たちの武器は『行動力』だという。岩田氏は行動に移すことで得られる経験と自信が、次の挑戦への支えとなっていると語る。
岩田氏:「心の中で何かやりたいと思っていても、それを行動に移すというのはまた次の段階だと思う。やってみたら自分にもできるんだという経験が、無意識のうちに他のことにも応用していける力になっていくと思います」

インタビューの最後に、西公園ブランディングプロジェクトの魅力を一言で表すなら何かを尋ねた。岩田氏は、このプロジェクトの魅力を『出会い』という言葉で表した。自分とは普段接点のない他大学の学生や地域の大人と出会い、同じ場で語り合えることが大きな魅力だと語る。さらに、その出会いは学生側だけにとどまらない可能性を示唆する。西公園周辺に住む人や日常的に公園を利用する人にとっても、学生が提案するアイデアと触れ合うことで、新しい視点や気づきが生まれるかもしれない。こうした双方向の出会いが広がっていくことが、このプロジェクトの面白さであると岩田氏は考えている。
一方浅野氏は、プロジェクトの魅力を『吸収と発信』という言葉で表した。魅力を伝えるためにブランディングを学び、情報を発信していく一方で、自分たち自身も多くのことを吸収していると述べる。その背景には、株式会社BLUE SODA代表取締役の相澤氏の『伝えなければないものと同じ、伝わらないものはないものと同じ』という言葉がある。いくら調べて魅力を見いだしても、それを適切に伝えることができなければ意味を持たない。その意識が、発信に対する姿勢を支えているという。同時に、吸収の側面についても強調した。定例会では新しい視点や気づきが得られるほか、この『TIME MACHINE NISHI PARK』の活動においてもメンバーがそれぞれ異なるテーマで執筆する記事から多様な知識が集まる。その積み重ねが新たな発見につながり、自分自身の学びにも広がっていく。浅野氏にとって、このプロジェクトは発信しながら学び、学びながら発信する循環が生まれる場となっている。
若者と大人による世代を超えた二つの異なる答え。しかし、その根底には共通するものがあった。それは、対話を通じて新しい関係が生まれ、その関係がきっかけとなって、また新しい出会いが生まれるということだ。西公園ブランディングプロジェクトは、答えを見つけることではなく、問いを共有し続ける場なのかもしれない。
Text:Rei Takahashi
Photo:kensuke Miura/ Yuki Suzuki
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