Project
2025/10/15
2025年8月23日、土曜の朝10時。仙台市青葉区中央市民センターの第2会議室に若者たちが集結した。この日は、今年4月に始動した〈西公園ブランディングプロジェクト〉は、第5回目の定例会当日である。
〈西公園ブランディングプロジェクト〉は、仙台市青葉区、株式会社BLUE SODA、そして東北福祉大学を中心とする仙台市内の大学機関による産学官連携のもとで進行しており、若者たちが約2年間をかけ、開園150周年を迎える西公園のブランディングに挑むのだ。しかし、これは単なる公園のPR活動ではない。その真の目的は、『若者が社会を自分ごととして捉え、自発的に行動できる人になること』。そのための実践の場を創出することにある。
そして本記事では、第5回定例会で、若者たちが限られた時間の中で密度濃く実践した、『3C分析』を用いた西公園の強みと弱みの徹底的な洗い出しの様子を、読者へお伝えする―。

第5回定例会で3C分析の解説を担当したのは、ブランディング、デザイン、広告のプロフェッショナルである株式会社BLUE SODA代表取締役の相澤総一郎氏(以下、相澤氏)だ。3C分析とは、市場・顧客(Customer)、自社(Company)、競合(Competitor)という3つの視点から事業環境を分析する、マーケティングの基本フレームワークだ。相澤氏は、このフレームワークを仙台市の『西公園』を事例に用いて解説した。
≫市場・顧客(Customer)
市場規模や成長性、顧客のニーズや消費行動を分析する。西公園で言えば、「誰が公園を利用しているのか」「どのようなニーズを持って訪れるのか」「市民にとって公園はどんな存在なのか」といった問いが分析の核心となる。
≫自社(Company)
自分たちが持つ事実、すなわち強みや弱みを洗い出し、整理する。今回でいう『自社』は、他ならぬ西公園そのものを指す。
≫競合(Competitor)
各競合の特徴や業界ポジションを把握し、自社との違いを明確にする。西公園の競合は、榴岡公園、勾当台公園といった直接的なものから、アミューズメントパークなどの間接的なものまで多岐にわたる。
若者たちは、真剣な眼差しで相澤氏の解説を聞き、熱心にメモを取った。彼らはこれから、学んだことを自分たちの手で西公園に適用し、価値を見出していく―。それに対する期待と高揚感が、会場全体を満たしていた。

3C分析の解説が終了すると、いよいよワークショップが開始され、参加者たちに『強み発見ワークシート』と『弱み発見ワークシート』が配布された。それぞれのシートは、ハード(物理的資産)、ソフト(無形資産)、ヒト(運営・活動)という3つの視点で洗い出しができるよう構成されている。
若者はまず、強みを洗い出す8分間の個人ワークに移行した。ここでは、西公園の強みを自由に、そして多角的に記入する。この工程は、公園が持つ可能性を広げる、ポジティブな作業だ。その後休憩を挟み、迎えた後半では、弱みの洗い出しを行った。ブランディングにおいて、弱みと向き合うのは決して容易ではない。しかし、弱みを正確に把握し、それをどう克服するか、どう強みに転換するかを考えることが、戦略構築には不可欠だ。若者たちは、西公園の強みと弱みの両方の側面を真剣な表情で捉え、熱心にペンを走らせていった―。

若者が出した意見は、付箋に書かれた状態で彼らの目の前にある大きな模造紙に次々と貼られていった。まず最初に行った強み分析では、西公園のポテンシャルが数多く出される結果となった。
≫圧倒的な広さと多様性
「圧倒的な広さ」「広い敷地にこどもたちの遊具がある」「広さを活かした多様な利用ができる(集合場所、ボール遊び、散歩)」、さらには「緑だけでなくダンスができる場所がある」「桜が綺麗でお花見ができる」といった、空間利用の多様性が挙げられた。
≫自然環境の豊かさ
「自然が多い」「大きな木がたくさんある(目に優しい、涼しい)」「川が近くにあり、他との差別化が図れる」「景色が良く、お散歩コースやランニングに良い場所」など、都市公園としての恵まれた自然環境が強みとして認識されていた。
≫アクセスの良さ
「駅チカ」「立地が良く、定禅寺通り・青葉通り・広瀬川・青葉山をつなぐ」といった交通の利便性や、都心における回遊性の高さが評価されていた。
≫イベント文化と歴史性
「毎週お祭り、イベント開催している」「花見やイベントや出店が多くある」といった文化的な豊かさに加え、「SLやこけし、レンガ下水道など唯一無二のものがある」「櫻岡大神宮と茶屋がある」といった歴史的・ユニークな建造物の存在も強みとして集約されていた。
強み分析で、公園のポテンシャルが数多く出された一方で、弱みの分析では数多くの課題が浮かび上がった。これらの弱みは、一見するとネガティブな要素に見える。しかし、若者たちは西公園を批判しているのではない。「西公園を今以上により良くしたい」と思うからこそ、真剣に弱みに目を向けた結果である。裏を返せば、これらすべてが改善の余地であり、西公園の未来を拓くためのヒントなのだ―。
≫分断の問題と情報発信の弱さ
「公園の間に道路がある」「南北、同じ公園だとわからない」「南北に行き来しづらい」といった構造的な分断に加え、「公式サイト的なものがない」「イベントの発信が弱い」という情報発信の課題が、公園の統一的な魅力を阻害していることが明確になった。
≫イベント依存の構造と環境面の課題
「イベントの場としか思われていない」「イベントがないと行く理由がない」といった、利用が特定の時期に偏るイベント依存の構造が課題として提起された。「車の音がうるさい」「虫が多い」「SLの前のあたりで喫煙している人がいる」といった環境面の問題も挙げられている。
≫管理体制と設備の不足
「自販機がない」「休憩スペースが少ない」「ベンチが少ない」といった休憩しづらさの問題や、「雑草が生えている」「ごみが目立つ」といった管理面の課題、「遊具が古い」といった設備の老朽化や不足も指摘された。
これらの課題は、若者たちの率直な視点から導き出されたものだ。西公園をより良くしたいと願うからこそ、彼らは真摯に弱みと向き合った。そしてこの姿勢から生まれた意見こそが、西公園の未来を切り拓く第一歩となるのである。
本ワークショップで最も印象的だったのは、若者たちの本気度だ。彼らは単なる参加者ではない。主体的に社会を『自分ごと』として捉えようとしている。西公園をどう良くするか、どう魅力を伝えるか—。その問いに、真摯に向き合いながら挑戦した3C分析という本格的なフレームワークを用いた議論や発表は、社会人が企業の戦略会議で行うプロセスと何ら変わらない。むしろ、凝り固まった大人の視点では見過ごしがちな、新鮮で鋭い意見が、次々と模造紙を埋め尽くす光景は圧巻だ。既存の概念に囚われない柔軟な発想は、大人たちにとっても、既成概念を打ち破る刺激ともなる。
理論を教わるだけでなく、実践を通して、徐々に自分たちの言葉で語れるようになる若者たちの姿。その真剣さは、行政関係者からも評価されつつある。若者たちの本気度と、そこから得られる学びや成長は、誰の目にも本物だ。そして本プロジェクトは、単なるブランディングに留まらない。若者たちが社会を本気で考えて価値を提供し、大人もそこから学びを得る、双方向の成長の場でもある。こうした動きは、若者個人の成長にとどまらず、仙台市という地域社会に対しても大きな意味を持つに違いない。

次回、9月20日に開催される第6回定例会では、引き続きリサーチと現状分析に取り組む。今回の3C分析で得られた知見を基に、『SWOT分析・クロスSWOT分析』を実践し、より深く西公園の本質に迫る。そして10月以降も、西公園ブランディングプロジェクトは進行する。2026年1月には仙台市生涯学習支援センターで、これまでの成果を披露する中間発表が予定されている。その後はブランド戦略の具体化へと進み、2027年の仙台市長や青葉区長へ直接発表することを目標に進んでいく。
若者が社会の当事者として、行政のトップに直接提言する—。この経験は、彼らの人生に、そして西公園や仙台市に、大きな変化と影響をもたらすだろう。今は全2年の長い道のりにおいてまだ5分の1地点。しかし、参加者たちの目にはすでに確かな手応えが宿っている。
次回以降も若者たちは、3C分析で見えた知見を活かして西公園の未来図をどのように彩り続けるのか。彼らの次なる一歩から目が離せない―。
Text:Yuki Suzuki
Photo:kensuke Miura
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