Interview
2025/12/31
2025年9月27日、自然あふれる豊かな緑に囲まれた西公園北側エリアに多くの人々が集まっていた。家族連れ、学生、地域団体の方々。会場には笑顔があふれ、出展ブースを巡る人々の楽しそうな声は西公園を包んでいた。この日は明治8年に開園した西公園の150周年を祝う記念フェスティバル、<みんなでつくる!西公園開園150周年記念フェス>が行われた。この賑わいの裏には、知られざる物語がある。地域を想う人々の努力、行政と市民の協働、そして西公園を次世代へ受け継ぐための想いの数々。
今回は、青葉区まちづくり推進課の田中豪氏(以下、田中氏)に、このフェスに込められた想いを聞いた。

写真:青葉区まちづくり推進課 田中豪氏
田中氏:「西公園は仙台市のシンボルになるような場所ですが、実はあまり知られていなかったんです」
インタビューの際に田中氏は率直に語る。実際、仙台駅周辺や定禅寺通、国分町といった中心部の喧騒に比べると、西公園周辺の人通りは少ない。イベント開催時には賑わいを見せるものの、日常的に訪れる場所ではないという印象を持つ市民も多いだろう。それでも田中氏は『西公園の真の価値』を伝えたいと言葉を続ける。
田中氏: 「中心部のすぐ近くにこれほどの公園があり、明治8年から長く市民に愛されてきました。その価値をもっと多くの人に知ってもらいたかったのです」
こうした田中氏ら『青葉区まちづくり推進課』の想いを形にしたのが、令和5年度から始まった『Fun, Fan, Find 青葉』事業である。このプロジェクトの背景には、知られざる地域の歴史があった。現在は落ち着いた佇まいを見せる大町・西公園エリアだが、かつては『芭蕉の辻』を中心に仙台の中心地として非常に栄えた場所であった。しかし、時代の流れとともに中心機能が移り変わり、かつての活気は失われつつある。
田中氏:「定禅寺通りや仙台駅周辺では、すでに魅力的なまちづくりが進んでいます。だからこそ、西公園を核として大町エリア全体を再び盛り上げたい。それが『Fun, Fan, Find 青葉』を始めたきっかけでした」
プロジェクトの初年度は、徹底して地域とのつながりを作ることに注力した。西公園で活動する団体や地域の関係者など、多様な主体と対話を重ね、「ここで共に何ができるか」というビジョンを共有していった。その努力が実を結び、令和6年度に入ると約20団体が集まる交流会を年3回ほど開催が実現。地域を盛り上げるための議論が成熟したタイミングで西公園は150周年という大きな節目を迎えた。「せっかくだから皆で何かをやり遂げよう」その熱意が結実した結果、大きな反響を呼んだ<みんなでつくる!西公園開園150周年記念フェス>という形に繋がったのである。
<みんなでつくる!西公園開園150周年記念フェス>当日、田中氏が会場で見た光景は忘れられないものだった。地域の人々が出展したブースを巡る来場者。「こんなものがあったのを知らなかった」「西公園を舞台として活動している団体がこういうところにあるのを知りませんでした」という声。出展者たちにとっても、自分たちの活動を知ってもらえる貴重な機会となった。個で活動していた人たちが、一つのイベントに向かって協力し合う。「もっと他の団体も取り込みましょう」という声も上がった。振り返りの会では、「とても良かった」という声が一様に寄せられた。そして何より、<西公園開園150周年記念フェス>をきっかけに出展した団体の個別イベントに来てくれる人が増えたことが大きな成果だったという。

また、<西公園開園150周年記念フェス>には多くの学生たちも出展。夜には学生たちによる野外映画上映という企画も行われた。
田中氏:「野外映画上映は学生団体の『ひまつぶし』さんが企画したイベントです。このような催し物はあまりなかったと思いますので、今後継続的にできれば、公園での新たなコンテンツやナイトコンテンツにもつながると思います。若い人たちがやってくださることは大変嬉しいです」
華やかなイベントの裏には、スケジュール調整、広報計画、チラシ制作等の無数の調整と準備がある。
田中氏:「たくさんの人が関わるため、たくさんの人の想いを汲み取りながら作り上げていかなければならないのです」
準備は令和6年度末の3月頃から始まり、業者選定、スケジューリング、地域団体との交流会を重ねながら当日に向けて進めてきた。メーリングリストで情報を共有し、個別に各団体のもとへ出向いて打ち合わせも行った。もちろん広報活動にも工夫を凝らした。チラシやポスターを人目につく場所に配置し、青葉通りの地下道や地下鉄駅のホームの広告板も活用した。SNSでは青葉区の公式インスタグラムで情報を発信。さらに、青葉まつりやジャズフェスなど仙台市内で開催される他のイベントとも積極的に連携を行った。「こちらで西公園のイベントを告知するので、9月27日の<みんなでつくる!西公園開園150周年記念フェス>を告知してもらえませんか」と他部署の協力も得ながらPRを進めた。
当日行われたデジタルスタンプラリーの実施も、職員が自ら手がけた。『仙台MaaS』というシステムを使い、西公園のこけし塔の近くなど、GPSでスタンプが取れるスポットを配置。これもすべて、まちづくり推進課の職員がシステムを学びながら設定した。
田中氏: 「デジタルスタンプラリーをやっている意味として青葉区の中心部を歩いてほしいということがあります。そこに来て、『青葉区にこういうところがあるのだ』『今まで気づかなかったけれど、こんなコンテンツがある』というものを見てもらうためです」
当日の運営も多くの部署の協力があった。公園課への使用許可の申請や、こけし塔のライトアップでの協力、さらには区役所内の家庭健康課による健康ブースの出展。
田中氏:「役所の中では、様々な協力をいただきながら行っています。一つの部署だけでやる事業というのはあまりないのです」
ここまでの準備を行えるのは、まちづくり推進課の西公園に対する想いがあるからに他ならない。

インタビュー中、田中氏にまちづくりというテーマに対して尋ねると次のような想いが返ってきた。
田中氏:「地域の人やそこを訪れる人たちが、ここに住みたいとか、ここに住んでいてよかったとか、ここに住んでいると本当に安心して安全に暮らせるなと思えるようなことをするのがまちづくりだと思っています」
田中氏は社会人採用で、まちづくり推進課に配属されて今年で5年目。最初の3年間は地域振興係で町内会を担当し、昨年度から地域活動係でイベント系を担当している。振興係では町内会長や地域の方々と向き合う。活動係では、さまざまな団体や業者と一緒に何かを作り上げていく。同じ課内でも、まったく違う仕事だ。
田中氏:「仕事内容は違っても、根本は住みやすい地域を作るというまちづくり推進課の目的がある。地域の人たちのためにということが一番なのでそこは変わりません」
田中氏:「行政が主になってやることは、あまり長く続きません」
田中氏の言葉には、まちづくりに対する明確な哲学があった。
田中氏: 「行政は市民を支える側の立場です。最初のスタートは行政が中心となりいろいろ組み立てますが、やはり地域の人たちが自分たちの住んでいる場所、自分たちの活動場所を盛り上げたいと思って、主体的に活動していただけることが大事なんです」
理想は、最終的に地域の人たちだけでイベントを運営できるようになること。行政がすべてをやるのではなく、地域の人から意見を出してもらい、地域の人が動く。そんな形を目指しているのである。実際、<みんなでつくる!西公園開園150周年記念フェス>では、日頃から西公園で活動する団体が主体的に関わった。終了後の振り返りでは、「自分たちのことをPRできるのも良いし、多くの人に知ってもらえたことが嬉しかった」という声が多く寄せられた。
田中氏:「今回のイベントでとある地域団体を知った人が、その団体の主催イベントに来てくれたりという良い事例も生まれました」
<みんなでつくる!開園150周年記念フェス>は、確かに新たな地域交流のきっかけになったのだ。

<みんなでつくる!西公園開園150周年記念フェス>は終わった。しかし、西公園の物語はこれからも続いていく。
田中氏:「西公園を日常的に使ってほしい。もっともっと西公園の良さをPRして、日頃から人が集まってきて、皆さんがくつろいだり楽しんだり、休める場所として西公園が活用されたりするといいなと思います。150周年をきっかけとして、今後もそういう場所になってほしいです」
田中氏の言葉には、確かな願いがある。西公園は、特別な日だけのイベント会場ではない。日常の中で誰もが気軽に訪れ、くつろぎ、そこで人とつながる場所。『地域のリビングルーム』のような存在であるべきなのかもしれない。今回の式典で明らかになったのは、西公園が持つ人をつなぐ力だ。地域で活動する団体同士がつながり、来場者と出展者がつながり、若者と地域住民がつながる。西公園という場所が、そのきっかけを確かに生み出している。そして、その力を支えているのは、地域を想う人々の努力である。こうして多くの人が協力し合うことで、西公園は次の時代へと歩みを進めていく。
あなたも、西公園の物語の一部に関わってみてはいかがだろうか。散歩でも、ベンチでの読書でも、友人との会話でもいい。西公園を訪れ、その空間を楽しむこと。それが、西公園の物語に関わる第一歩になる。150年前、明治の人々が作り上げた西公園。その想いは、令和の時代にも確かに受け継がれている。そして次の50年、100年、200年へ。この公園が、これからも仙台市民に愛され続ける場所であるために。
Text:Souta Matsune
Photo:Souta Matsune/Yuki Suzuki
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