Project
2025/12/10
2025年11月22日、青葉区中央市民センターに20名を超える若者が集結した。今回からは新たに宮城教育大学から若者を1名迎え、プロジェクトはいよいよ新たなステージへと移ろうとしている。
現在彼らが向き合っているのは、〈西公園ブランディングプロジェクト〉だ。2025年4月19日にキックオフしたこの挑戦は、仙台市青葉区若者社会参画型学習推進事業史上初となる産学官連携のもと、前例なき取り組みとして動き出した。タッグを組んだのは、仙台市青葉区、株式会社BLUE SODA、そして東北福祉大学をはじめとする仙台市内の大学機関の三者。開園150周年を迎える西公園をブランディングすべく、若者が約2年間かけて主体的に取り組んでいる。
第8回定例会となったこの日のテーマは、『ブランドテーマを見つけ出す』。前回までに積み重ねてきた議論も踏まえて、西公園が目指すべき未来を言葉へと言語化させる。株式会社BLUE SODAの代表取締役である相澤総一郎氏がメンターとして伴走するこの場で、若者たちは約2時間のワークショップに挑んだ。自分たちのアイデアが社会を動かす可能性を前に、若者たちは真剣に、そして楽しみながら、西公園の未来を言語化していった。その結果、現状6つの異なるブランドテーマが導き出された。
本記事では、ブランドテーマ創出という重要な局面に挑んだ若者たちの熱意と、白熱した議論から生まれた6つの言葉を、ここにレポートする。

第8回定例会は、前回のおさらいと本日の概要説明からスタート。その後はワークショップへと移行し、以下のStepで進行した。
まず取り組んだのは、『How Might We...?(どうすれば私たちは...できるだろうか?)』(以下、HMW)という問いの再構築である。前回の第7回定例会でHMWという概念を初めて学んだ若者たちは、今回その経験を踏まえ、『テーマを生み出すための問い』として、より強力に磨き上げる作業に挑んだ。10分間の個人ワークで、若者たちは付箋に自分なりのHMWを書き出した。付箋書き出し終了後は5分間のグループ内シェアを経て、各グループは最終的なHMWを1つに絞り込む作業へと移行した。議論を重ねた結果、グループごとに1つのHMWを確定させた。
各グループは確定したHMWを起点に、テーマのアイデアを発散させた。ここでいうテーマとは、『公園の方向性を定める新しい言語』である。 “このHMWに答える『公園の新しい姿』は?” と問い続けながら、可能性を広げていく。10分間のアイデア出しでは、多様なアイデアが飛び交った。そこから5分間のグルーピング作業を経て、似たテーマを集約し、次のStepへと進んだ。
そしてここからは最も重要な局面を迎える。数ある方向性の中から、最も勝算があり、グループが情熱を注げるテーマを1つに決定する作業だ。1つに絞るための評価軸として、『若者への魅力度』『独自性(差別化)』『実現可能性』の3つが示された。
10分間の議論を通じて、各グループはテーマを1つに絞り込んでいく。今まで出た抽象的な議論を言語化していく作業は容易ではない。しかし、5分間の発表準備を経て、各グループは確信を持って自分たちのテーマを言語化していった。
最後に、6つのグループが2分ずつ発表を行った。確定したHMW、決定した最終ブランドテーマ、そのテーマを選んだ戦略的理由。それぞれのグループが導き出した『西公園の未来像』は、示唆に富み、驚くほど多様なものとなった。
各グループは、確定したHMWを起点に多様なアイデアを発散させ、その中から3つの評価軸(若者への魅力度、独自性、実現可能性)をもとに最終的なブランドテーマを1つに絞り込んで全体発表を行った。その過程と結果を、ここに記録する。

確定したHMW:どうすれば魅力のある公園にできるだろうか?
Aグループは確定させたHMWから下記のアイデアを発散させて、最終ブランドテーマを導き出した。
『キャンプ体験/馬の試乗体験/アスレチック/動物とふれあえる/広い土地をいかしたイベント/宿泊/地形をいかしたバンジージャンプ/西公園アイドル/現代アート×公園/SNS映えするもの/キッチンカーがあれば/オシャレなカフェ/バーベキュー/自然/夜景/季節を感じられる/自然を見ながら美味しいものが食べられる』
確定したHMW:どうしたら今あるものをオフシーズンの魅力としてアピールし、通り道以外の用途として使ってもらえるだろうか?
Bグループは確定させたHMWから下記のアイデアを発散させて、最終ブランドテーマを導き出した。
『定禅寺通りとの連携/エリア分け/脱公園化/休む場所としての公園/人との交流の場となる公園/静かな場所としての公園/アンティークといえば西公園/聖地化/西公園に若者の目を引くもの/ペット連れが多かったのでそれを何かできないか/紅葉などインスタ映えが狙える公園/茶屋などでインスタ映えが狙える公園/遊具がいっぱいあるというイメージの西公園/歩道橋をいかした西公園/写真スポットづくり/公園の遊具を自分たちで増やしていく/枯葉でものづくり/積極的なイベント開催/仙台駅からの広域マップ/ロードマップの制作/時計台/プロジェクションマッピング/ライトショー/カフェなどとタイアップして若干商業味ある公園/インスタを運営している公園/フェスだけじゃなくスタンプラリーなどもやっている公園』
確定したHMW:どうすれば固有性を引き出し発信することができるだろうか?
Cグループは確定させたHMWから下記のアイデアを発散させて、最終ブランドテーマを導き出した。
『写真を撮りたくなる公園/SNSを活用する公園/それぞれのスポットに印象的な名前がある公園/インスタ映えする公園/新たな出会いが生まれる公園/自然を感じられ、癒される公園/景色が魅力になる公園/広瀬川を近くで感じられる公園/季節の木や花を生かした公園/五感を活かして楽しめる公園/西公園プレーパークが特徴的な公園/モニュメントを見て楽しめる公園/アクティビティがある公園/おやつを食べながら時間を過ごせる公園/限定の品を食べられる公園』
確定したHMW:どうすれば西公園の魅力を効果的に活かし、若者が自分ならではのワクワクや楽しみを見つけられる工夫ができるだろうか?
Dグループは確定させたHMWから下記のアイデアを発散させて、最終ブランドテーマを導き出した。
『アート系(定期的に変更)/ふれあい/遠くから来たくなるような若者が好きそうな映えスポット/音楽系・メロディーロード系/移動図書館/スポーツ大会/店とかPOPUPができるような場所・施設/若者に人気なインフルエンサーを呼ぶ/冬のイベント系イルミネーション・オブジェ/デートスポット/公園の中にカフェがあったら若者が来そう/西公園の端から端までの中で違うアクティビティを楽しんでいるのを風景として見られる/自然(五感)/イチョウやサクラなどの樹木の季節の変化が見られる/休める場所がありすぎる/広いからできるようなランニング・ウォーキングコースをつくる/サイクリング/ドッグランをつくる/場所それぞれで違うインテリアが置かれ、エリア的な区別がされる』
確定したHMW:どうすればNO.1になれるだろうか?
Eグループは確定させたHMWから下記のアイデアを発散させて、最終ブランドテーマを導き出した。
『他の公園にないものを取り入れる/他の公園の良い所を真似する/ドッグランをつくる/キャラクターマンホールパネル/イベント・屋台等に金をかける/フォトスポット/写真をたくさん撮りたくなる公園/散歩コース・ランニングコースをつくってみる/ベンチ・つくえ休める場所/ご飯を食べたくなる公園/西公園を地元にする/ちょっと時間ができた時に立ち寄る公園/公園と言えば西公園のイメージをつくる/友達と遊ぶときに「公園いく?」となる公園/1年中お花が見れる/自然が多いリラックスの場所へ/疲れたときに一息ついて休める公園』
確定したHMW:どうすれば家から距離があっても利用したいと思えるような、楽しみ方を若者に提案できるだろうか?
Fグループは確定させたHMWから下記のアイデアを発散させて、最終ブランドテーマを導き出した。
『リフレッシュできる公園/ポイント制/健康に良い公園/お昼寝ピクニックをつくる/公園で食事/心を落ち着けたい人が来る公園/ヨガができる/芝生の上でハンモックやふわふわなクッションを借りて読書やお昼寝を楽しむ/忙しい日常から離れた解放感/木漏れ日が心をほぐす空間/フォトスポットをつくる/青空骨董市・青空絵画展/ぬいどりできる公園(オタ活)/野外アトリエ/工房スペースをつくる/水源や既存のもの/殺風景からアートにするサステナビリティ/西公園の敷地からはみ出す感じ/景色が伝わるような発信の仕方/オウンドメディアで発信し広める/西公園のに関する情報を周囲のお店で発信する/音楽フェスを楽しめる公園』
定例会後に実施されたアンケートには、若者たちの率直な感想が寄せられている。
特に印象的なのは、意見を言語化する難しさに直面しながらも、それを乗り越えていく過程への言及である。「意見や考えを文字に起こしたり、西公園のイメージをテーマに起こしたりすることに苦労したので、グループのメンバーの提案や他のグループの発表に参考になる部分があり、驚きと発見がありました」という声は、学びの深さを物語っている。 また、ワークショップで得た視点の重要性を認識する声もあった。 「アイデアを出す時は、自分がワクワクするか西公園に行きたいかが大切になるという考え方は、他のアイデア出しの時にも大切になる考え方だと思った」 この声からは、若者たちがワークショップを自分ごととして捉え始め、その成長を他の活動にも活かそうという意識の変化が伺える。
第8回定例会で特筆すべきは、若者たちのアイデアの質が格段に向上していた点だ。前回の第7回定例会では、HMWという概念を初めて学び、量を重視したアイデア発散に焦点が当てられていた。今回はその基礎を習得した上で、さらにHMWを創出するところからスタートした。若者たちが出した全44個のHMWを見ると、問いの立て方が格段に洗練されている。若者たちは西公園の課題を捉え、それを乗り越える問いへと昇華させる力が確実に身につき始めていた。

第8回定例会を終え、プロジェクトはいよいよ新たなステージを迎えようとしている。次回の第9回定例会では、最終的に全体で1つのブランドテーマに絞り込む作業が待っている。どのテーマも、学生たちが真剣に西公園と向き合い、若者の視点で未来を描いた熱量の結晶である。ここから1つに絞り込む作業は、容易ではないだろう。しかし、そのプロセスこそが、若者たちが社会を自分ごととして捉え、合意形成の難しさと向き合い、大きく成長していく機会となるのだ。実際に、アンケートに寄せられた「理想の公園を想像するだけでワクワクして楽しかった」、「それぞれのアイデアを組み合わせる作業が楽しかった。それの延長線で、こうなるのかなと想像するとワクワクできた」という声からも分かるように、若者たちは単なる楽しさを感じるだけではなく、社会に参画することへ確かな手応えをすでに感じ始めている。
2027年、このプロジェクトが完了した時、西公園はどのようなブランディングを遂げているのか。そして何より、このプロジェクトに関わった若者たちと社会との関係性はどのように進化しているのか。若者たちは新たな『西公園の未来』に向けて、これからも仙台の地で着実に、そして情熱を持って歩みを進めていく。
Text:Yuki Suzuki
Photo:kensuke Miura
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