西公園ブランディングプロジェクトのはじまりに迫る |三浦氏 × 木村氏座談会 

      • Interview

      2025/10/01

      2025年、西公園は150周年という節目を迎える。仙台市青葉区に位置するこの公園は、長年市民に親しまれてきた憩いの場である。だが、ただの記念事業では終わらせない。若者が主体となって地域の未来を描く『西公園ブランディングプロジェクト』が始動した。このプロジェクトは、大学・行政・企業が連携し、若者の社会参画を促す新たな試みである。今回は、その立ち上げに深く関わった三浦氏と木村氏による座談会を通じて、プロジェクトの背景、展望、そして若者へのメッセージを紐解いていく。

      (写真:左から順に三浦氏、木村氏)


      出会いのきっかけ

      現在、仙台市青葉区若者社会参画型学習推進事業(以下、青葉区若者事業)を担当する三浦氏と昨年度担当してきた木村氏。二人が出会ったのは仙台市の嘱託社会教育主事として同じ立場で働いていたことがきっかけである。最初は深く関わることもなかったが、転機となったのは今年2月に利府町で行われた株式会社BLUE SODA代表取締役の相澤氏が講師を務める〈ブランディング×地方創生を学ぼうイベント〉に木村氏が参加し、その熱気を語ったことが三浦氏を動かした。

      三浦氏:「木村さんが珍しく“すごくいいセミナーだった”と熱く語っていて、驚いたんです。普段クールな人が、そんなふうに言うなんて。だからこそ、興味を持って一緒に参加したのが始まりでした」

      その後、株式会社BLUE SODAの相澤氏、鈴木氏との出会いにつながり、プロジェクトの輪郭が少しずつ形を帯びていった。

      木村氏は、『社会に出てからの汎用的な力』を若者事業の参加者に身につけて欲しいという思いを抱いていた。参加者が社会に出たときに自分の力を発揮して、社会貢献や自己実現できるような力をつけられる場でありたいと考えていた。その理念が、ブランディングという概念と見事にリンクした。

      木村氏:「相澤社長の話に心を打たれました。熱量を持って語れる人は少ない。若者にも響くと思ったんです」


      西公園とブランディング

      なぜ西公園を舞台にブランディングを行うことになったのか。木村氏は率直に語る。

      木村氏: 「考え方を学んでほしかった。大切にしたいのは“考え方”であり、人との関わりを通じて力を育むことで、個人に返っていくと思う」

      プロジェクトの舞台に西公園を選んだ理由は、単なる地理的な偶然だけではない。150周年という節目に加え、『ブランディング』という考えが若者に大切だと考えたからだ。

      それに対して三浦氏は補足する。

       三浦氏:「木村さんと話をしていて、どうせ事業をやるなら楽しくやりたいということで、ブランディングというと集まるだろう と、木村さんがアドバイスしてくれた。さらに150周年という節目と重なったことで、『西公園ブランディングプロジェクト』と掲げれば人が集まるはずだと確信した」

      象徴的な場所と、響きのあるコンセプト。それが掛け合わさることで、若者を巻き込む旗印となった。地域活性化と人材育成という二つの軸が交差するこのプロジェクトは、若者にとっても、地域にとっても意味のある挑戦となった。


      三者連携による新しい学びの場

      このプロジェクトの特徴は、大学・行政・企業の三者が連携する点にある。学生や担当者は、実践的なノウハウを、プロフェッショナルの伴走によって学ぶことができる。

      三浦氏:「行政と大学と企業 の三者間で何かプロジェクトをやりたいなという想いがずっとありました。私は社会科だったので、社会とつなげたい、社会を自分事として学生に体験させたいという想いがありました」

      木村氏:「熱量を持って語れる人というのは少ないので、BLUE SODAの熱量なら若者の方にも伝わるのではないかと感じ、関わってもらいたいと思いました」

      プロジェクトに関わる株式会社BLUE SODAの相澤氏と鈴木氏の存在は大きい。二人は単なる外部講師にとどまらず、プロジェクトの方向性を共に考えるパートナーとなった。木村氏はこう振り返る。

       木村氏:「最初の打ち合わせで事業の細部ではなく、どういう想いでこういう業務や事業を考えているのですか、という本質的な芯の部分を聞いてもらった」

      打合せの議論は単なる計画の確認ではなく、熱のこもった問いかけと応答の連続だった。「本気で向き合ってくれるので、こちらも本気にならざるを得なかった」という三浦氏の言葉が示すように、学生に生きた力を身につけて欲しいというから想いから、関係者による度重なる相談によって、ブランディングプロジェクトが決定した。


      短期間での変革とその背景

      前年度の若者事業から、西公園ブランディングプロジェクトへの移行は、わずか数ヶ月という短期間で行われた。木村氏が取り組んでいた若者事業では、前年度との連携によって次年度の内容が決まるため、形を変えるのが難しかったという。今年度は、木村氏が三浦氏に引き継ぐタイミングで『ブランディング』というこれまでにない新たなテーマが掲げられた。その背景には、木村氏から三浦氏へのバトンの受け渡しがあった。

      三浦氏:「木村さんの試行錯誤を無駄にしたくなかった。だからこそ、その想いを引き継ぎつつ、プロの知見を借りて発展させたいと思った」

      木村氏:「三浦さんが“面白そう”って言ってくれたから実現した。そうじゃなかったら、今まで通りの事業で終わっていたかもしれない」

      学生を集めるためのテーマとして、ブランディングプロジェクトをやることが決まり、多くの人に協力をしてもらいながら広報したことにより、産学官連携のブランディングプロジェクトの形が決定した。結果、1月から3月のわずか数か月で体制は整えられ、大学生を巻き込む新しいプロジェクトへと移行した。短期間での切り替えは決して容易ではなかったが、挑戦を好む三浦氏の姿勢と、諦めず種をまき続けた木村氏の試行錯誤が、短期間での変革を可能にした。


      活動への想い

      短期間でプロジェクトの移行を進めた二人の熱量には、活動への強い想いがあった。二人は、活動を続ける行動指針となるようような、自らの想いと理由を語る。

      木村氏:「学校教育や社会教育部分に携わってみて思ったところは、 社会的に他責的な人が世の中増えていないかなと思っています。何かあったらどこかの責任だろうとかっていうような人が増えていると、すごく生きづらくないかなと。ブランディングって、自分の中にある答えを探し出していくっていうところで、自分のブランディングを学ぶことによって、社会の見方っていうのは、多分変わっていく」

      三浦氏: 「私の根本にあるのは、 同じ時間を過ごすんだったら、楽しんだもの勝ちだなと。 やるからには本気でやりたいというのがあって、いろんなところと巻き込みながら、学生が社会に出たときに役立つノウハウを、伴走型支援でできるようなプロジェクトがいいですよね、みたいな話で今回スタートしました」

      活動に本気で取り組む姿勢の裏には、様々な組織を巻き込んだブランディングプロジェクトによって、学生が自分の特性やできることを探して見方や考え方を身につけることで、社会に出た時に役立てて欲しいという参加者への想いがあった。


      若者の可能性

      活動を通じて二人が強く感じたのは、若者の中に秘められたエネルギーである。SNS全盛の時代において、表面上は見えない想いが、対話を重ねることで現れる。

      三浦氏:「実際に向き合って話してみると、みんな何かを求めてここに来ている。学びたい、力をつけたい、社会に触れたい。そうした思いに触れると、この場の意味を実感する」

      木村氏は、昨年度担当していた若者事業の中で印象に残っている出来事として、ガイドツアーに向けたフィールドワークを挙げた。学生自らが価値のある紹介できそうな場所を探している時に、気持ちが見えていた部分が印象に残っているという。

      木村氏:「人によっていろいろ興味あることや、目指していることが違うんで。視野を広げてほしい」

      二人は活動の中心である若者へのメッセージを語った。二人は、学生と向き合う中で、可能性を強く感じている。

      木村氏:「学生同士での交流もそうだけれども、案外やっぱり外から呼んできている人とはどんどん話して、どういう人生観で歩んできたのかくらいまで話をしたほうが、これからの人生が少し広がるかもしれない」

      三浦氏も続ける。

       三浦氏:「どんどん入っていってもらって、自分の殻を破ってチャンスをつかんでもらって、羽ばたいてほしいなって思います。このブランディングっていうのは、実は非常に大事なものだから、自分たちの中でも優先順位を高めて、この場で深掘りとかしながら高めていってもらいたいなと思います」

      二人が口を揃えて伝えるのは、「出会いを活かすかどうかは自分次第」というメッセージである。若者たちがこのプロジェクトを通じて、自分の価値を見つけ、社会に還元していくこと。それが、二人の願いである。


      プロジェクトの将来像

      このプロジェクトは、単なる地域イベントではない。若者が主体となり、社会に還元される持続的な動きへと育てることだ。三浦氏と木村氏のような教育者が、その背中を押し、プロフェッショナルが伴走することで、若者たちは自らの可能性を広げていく。

      三浦氏:「仙台市に何かしら還元されて、かっこよく言えば形になってほしい。誰かのハートに訴えかけて、動きが起きて、それが自分の力になったら、みんなハッピーだと思う」

      西公園というフィールドから始まったこのムーブメントは、やがて仙台市全体、そして社会へと広がっていく。二人が目指すのは『学んで終わり』ではなく、『社会を動かす』こと。その先に広がる未来像を描きながら、プロジェクトは進み続ける。


      座談会を終えて

      座談会の最後に、互いへの印象を尋ねると、笑いを交えながらも信頼がにじむやりとりがあった。

       三浦氏:「木村さん、私はこんな感じで前向きな感じですけれども、いつも木村さんが一度止まって、広い視点で見たほうが物事見れるよっていうのは、教わった言葉で。だから、やっぱり俯瞰して落ち着いて、私たちのことも気にしてくれて。そういう人と働けて幸せだなって」

       木村氏:「三浦さんが担当してから形が変わった。通常の学校教育の主事だと、たぶん形がちょっと違ってたと思う。ある意味、ハングリーなので、こういう形で先生たちは作れない」

      俯瞰を大切にしながらも内に熱い想いがある木村氏、楽しみながらも本気で取り組むハングリー精神のある三浦氏、二人の出会いによって事業が大きく変化した。若者が社会に出た時に役に立つ力を身につけて欲しいという、共通する想いがあったことで、自治体や企業を巻き込む大きなプロジェクトがようやく形となった。


      結びに

      『西公園ブランディングプロジェクト』は、単なる地域活性化イベントではない。若者が社会と接続し、学びを実践する場であり、未来を描く試みである。木村氏と三浦氏が語ったように、社会に出てから役立つ力を身につけるためには、リアルな出会いと挑戦が不可欠だ。

      150周年を迎えた西公園を舞台に、多くの人と関わることで若者たちはどんな未来を描くのか。『TIME MACHINE NISHI PARK』が発信する物語は、これからも続いていく。


      Text:Reika Muraoka
      Photo:Reika Muraoka/Yuki Suzuki

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