熱意が集結した本気の産学官連携関係者が想い描く『人づくり』と『まちづくり』 

      • Interview

      2026/1/21

      仙台市青葉区に位置する西公園が、今年150周年を迎える。この大きな節目に合わせ、行政・大学・企業による産学官連携のもと、若者が主体となって進める<西公園ブランディングプロジェクト>が始動した。このプロジェクトは、若者が地域の未来を自らの手で形づくろうとする挑戦であり、同時に、志を同じくする“本気の大人”たちが集い、次世代とともにまちの在り方を構想する実践の場でもある。そして本記事では、プロジェクトの中核を担う三者の座談会を通じ、その意義と可能性を紐解いていく。登壇者は、プロジェクトの発起人の1人であり、青葉区中央市民センターで社会教育主事を務める三浦健輔氏(以下、三浦氏)。まちづくりコンサルタントとしての実務経験を持ち、現在は東北福祉大学産業マネジメント学部で教授を務める石塚裕子氏(以下、石塚氏)。そして、ブランディングデザインから広報まで幅広く手掛ける株式会社BLUE SODA代表取締役の相澤総一郎氏(以下、相澤氏)である。この三者たちが産学官連携に関わりながらが描く未来像の本質に迫る。

      写真:左側から相澤氏、石塚氏、三浦氏


      出会いが生んだ西公園ブランディングプロジェクト

      <西公園ブランディングプロジェクト>は、若者社会参画型推進事業(以下、青葉区若者事業)の一環として始まった。令和7年度の事業開始にあたり、三浦氏は東北福祉大学の前任者から石塚氏を紹介された。きっかけは、三浦氏と前担当者の木村慎吾氏の「新しいことに挑戦したい」という強い想いだった。三浦氏は市内の大学を自ら訪問して歩き、最終的に市内6大学から学生が参加する体制を築き上げた。さらに、企業の専門的知見が必要と考え、交流のあった株式会社BLUE SODAへ声をかけた。石塚氏は、学生がフィールドで継続的に学べる場を求めていたこともあり、2年間かけて丁寧に進めるというプロジェクトの方針に共感したと話す。

      石塚氏:「引き継ぎの際にプロジェクトの構想を聞き、西公園の150周年と本学の150周年という縁を感じました。学生には、まちづくりとはコツコツと積み上げて変えていくものであることを学んでほしいと考えました」

      相澤氏も、三浦氏から説明を受けた当時のことをこう振り返る。

      相澤氏:「三浦さんたちの熱意に圧倒されました(笑)。それに、産学官連携をいつかやりたいと思っていましたし、『これは本気で引き受けるしかないな!』と直感しました。」

      三浦健輔氏と前担当者の木村慎吾氏2人による座談会記事『西公園ブランディングプロジェクトのはじまりに迫る|三浦氏×木村氏座談会』はこちらから


      熱意がつないだ産学官の輪と活動当初の印象

      三浦氏が語るプロジェクト立ち上げの裏側には、強い信念がある。

      三浦氏:「社会科の教員だった頃から、産学官連携をいつか実現したいと思っていました。教科書には載っているのに、自分自身に経験がないため実感が湧かない。ならば自分でやるしかないと。BLUE SODAさんとは非常に良いタイミングで出会えました。」

      石塚氏は、当初『ブランディング』という手法を『ロゴを作るようなもの』と捉えていた。しかし、実際に始まってみると、3C分析やSWOT分析など、まちづくりの実務でも使われる本格的な戦略設計が行われていることに驚いたという。

      石塚氏:「建設コンサルタント時代に実践してきた手法が、ブランディングのプロセスにも組み込まれていると分かりました。私自身がブランディングの専門家ではありませんが、近年の建築やまちづくりにおいて『ブランディング』は重要なキーワードです。学生にとって非常に良い機会だと感じています。」

      これに対し、相澤氏は次のように語る。

      相澤氏:「当社はデザイン制作だけではなく戦略設計も得意とする会社ですので、見た目だけでなくその奥にある論理的な部分を感じ取っていただけて嬉しいです。まちづくりもブランディングも、本質的なプロセスは変わらないのかもしれません。」


      活動で見えてきた、人づくりがまちを動かすということ

      座談会を通じて浮き彫りになったのは、三者が共通して『人づくり』をまちづくりの根幹に据えている点である。

      石塚氏:「まちづくりは『かたち、しくみ、こころ』の3つが揃わなければ成立しません。学生はつい『かたち』や『しくみ』だけに目を向けがちですが、その捉え方を変えていくことが大切です。」

      相澤氏:「石塚先生の仰る通りで形や仕組みだけでなく、人が変わらなければまちは変わらないと思っています。最近は『地域活性とは、人をつくり、まちをつくること』と言っています。私たちはあくまでお手伝いをする立場で主役はまちの人。人が変わるためには、何年もかけて丁寧に取り組む必要があると考えてます。」

      三浦氏:「世の中を良くするために、教育を通じて社会の担い手を育てたい。人の心が変わらなければ、社会は変わっていきません。」



      場づくりの重要性と印象的な出来事とは

      活動の中では、分析や戦略設計、フィールドワークを通じて、問題解決能力や継続力を養う機会が設けられている。また、相澤氏は『空気づくり』の重要性を説く。

      相澤氏:「場を盛り上げる裏方の努力が、学生の学ぶ気持ちの高さやワークの質を引き出します。グループワークの進め方やコミュニケーションの取り方など一見些細なことですが、この「空気づくり」がとても重要で、これは社会に出た際に不可欠なスキルになります。ここはまさに『人づくりの現場』なんです。」

      石塚氏:「地域の専門家は、そこに住んでいる人たち自身。学生をフィールドに出して、多様な経験ができる場を作っていくことが重要です。」

      また、普段の定例会では大学や年齢の垣根を越えた活発な議論が展開されていることに関して以下のように意見を交わす。

      石塚氏:「学内でのディスカッションよりも遥かに盛り上がっていました。意見を交わす姿を見て、若者の可能性を感じましたね。」

      相澤氏:「異なる大学の学生が自然に話し合っている光景は、自分の学生時代には経験しなかったことで羨ましく感じます。そして先生方もグループに入ることで、行き詰まった際のフォローや方向修正がなされ、ワークの質がより高まっているのが印象的でした。」

      三浦氏:「石塚先生がおっしゃった『自分事として考える』ことの大切さに改めて気づかされました。そうでないと何も変わっていきませんから。」

      7月に行ったフィールドワークについても振り返る。

      三浦氏:「私は実際に西公園利用者にインタビューを行うフィールドワークが印象に残っております。相澤社長からのアドバイスをもとに、学生たちが軌道修正しながら進めている姿が頼もしかったです。」

      石塚氏:「その時私は若者のエネルギーを肌で感じました。実際に体を動かすことが、チームの結束力を高める良い機会になっていると思います。」


      「やる大人側が本気に―」運営の裏側と広がる可能性

      プロジェクトの質を維持するため、運営側では緻密な連携が行われている。定例会後の反省会、ワークシートのデータ化、2週間おきのオンライン会議、2ヶ月おきの三者会議。こうした“大人の本気の準備”を、学生にも知ってほしいと3人は語る。

      石塚氏:「準備や企画といった段取りを経験することも貴重な学びになります。今後は学生自身にもワークショップを企画してほしい。そうすることで、機会が与えられていることのありがたさに気づくはずです。」

      相澤氏:「学生が活動しやすい空気を作ることが私たちの役割。もちろんブランディングをしっかり学んでほしいですが、物事の『空気』を作る大切さもを一緒に学び取ってほしいですね。」

      また、座談会の中で課題として挙げられたのは継続性だ。人数の多さよりも、学生がどれだけ参加し続けて価値を多く持ち帰ることができるが重要となる。

      三浦氏:「ブランディングの専門家から学べるチャンスは、ここにしかない価値です。」

      石塚氏:「チャンスをスルーせず、キャッチできる感度を高めてほしい。色々な機会に触れることでしか、感性は磨かれません。」

      相澤氏:「まずは一人でも『面白い』と思う学生を増やすこと。その熱が伝播していくよう、積み上げていきたい。やる側の大人が本気で面白いって思ってやることが大事。自分が本気にならないと相手には伝わりませんから。」



      「仙台で一番面白いプロジェクトだった」と言われるように。大人たちが思い描く未来

      三浦氏:「事務局として大学と企業をつなぎ、仙台をより豊かなまちにしたい。今後はさらに地域住民の方々を巻き込み、その声を深掘りしていきたいです。」

      石塚氏:「住んでいる人、働いている人を巻き込みたいですね。また、市への提案を『出しっぱなし』にせず、学生自身が根拠とアクションを伴った活動にしていければと思います。組織の一員としてではなく、自分の立場から一歩踏み出し、自発的に取り組むスタンスを身につけてほしいです。」

      相澤氏:「西公園を起点に、近隣地域、そして仙台市全体へ広げたい。オウンドメディアなども活用し、最終的には『仙台で一番面白いプロジェクトだった』と皆に言われるものにしたいですね(笑)。」


      行動することでしか見えない景色を求めて―

      <西公園ブランディングプロジェクト>では、毎月1回の定例会を実施している。12月に若者に実施した自己評価シートには、「関係者との交流の貴重さ」や「無関心だった事柄が学びに変わる驚き」など、実際に若者たちの成長の跡も記されている。それは、大人たちの本気の姿勢が確実に若者たちに伝播している証拠でもあり、産学官連携には、人づくりを通じて地域を変える力を生み出すことができるのだ。

      <西公園ブランディングプロジェクト>はその実践の場であり、未来へ広がる可能性を秘めている。そこで行動してみて初めて見える景色がある。その一歩を後押しするのが、このプロジェクトの役割だ。若者が自らの感性を磨き、行動を起こす。そうした一人ひとりの積み重ねが、まちを変え、社会を変えていく原動力となるだろう。


      Text:Reika Muraoka
      Photo:Reika Muraoka/Yuki Suzuki

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