Project
2025/9/10
2025年4月19日午前10時。仙台市青葉区中央市民センターの一室に、20名を超える学生を中心とした若者たちが集結した。それぞれ異なるキャンパスで学ぶ彼らが、今日という日に一堂に会した理由はただ一つ。それは前例のない産学官連携による、西公園ブランディングプロジェクトの第1回定例会である。
会場では、仙台市青葉区中央市民センターの職員、株式会社BLUE SODAの2名、大学機関の関係者といった大人たちもこの歴史的瞬間を見守っていた。青葉区若者事業として初の2年間プロジェクト、初の産学官連携、そして初の本格的なブランディングへの挑戦。すべてが初づくしのこの日は、新時代を切り拓く、壮大な挑戦への幕開けなのであった―。

まずはじめに、青葉区中央市民センターで主任を務める今川義博氏(以下、今川氏)が、集まった若者たちに今回のプロジェクトについて説明を行った。話が進むにつれて、『西公園ブランディングプロジェクト』と名付けられたこの取り組みの全貌が、若者たちにとっても徐々に明らかになっていく。
今川氏の話によると、若者たちは株式会社BLUE SODA(*1)代表取締役・相澤総一郎氏(以下、相澤氏)からブランディングのスキルを学びながら、西公園のブランディングに取り組む。具体的には、ブランディングのプロセスに沿って、現地での実地調査、競合分析、ブランドコア作成、戦略設計等といった実践的なブランディングに取り組んでいくという。そして、最終的に目指すことは、若者自らの成果を区長や市長への直接提言するという、これまでの若者事業では考えられなかったゴールだと今川氏は若者たちへと伝えた。
*1株式会社BLUE SODA:専門はブランディング、デザイン、広告。代表取締役は相澤総一郎氏が務める。
第1回目の定例会では、相澤氏が登壇。『ブランディング』をテーマに約1時間半かけて若者たちへセミナーを行った。
相澤氏の経歴はとても多彩だ。大手ソフト開発会社を経て2011年に独立し、ソフト開発会社設立やアパレルブランド立ち上げ、海外コンサル会社および広告代理店設立に参画した後、2016年に株式会社BLUE SODAを設立。中小企業から映画、音楽、芸能関係まで、業界を問わず幅広い分野でブランディングデザインを手がけてきた実績を持つプロフェッショナルである。そのブランディングのプロフェッショナルから聞くセミナーは他では中々聞くことができなことばかりで、集まった若者たちはもちろん、その場にいた大人たちも心を奪われるような内容であった―。

(写真:株式会社BLUE SODA 代表取締役 相澤総一郎氏)
>>ブランド=独自性(違い)
まず、ブランドという言葉に対して多くの人が抱くイメージは、高級品やロゴマーク、そして大企業のものという固定観念に囚われている。しかし、相澤氏は、「ブランド=独自性(違い)」だと説明する。では、ブランディングとは一体何か。その答えを相澤氏は次のように説明する。
相澤氏:「ブランディングとは、"違い"を"かたち"にすることです。また、ブランドはすべての企業が持つ無形の資産であり、ユーザーに対する約束でもあります。そして重要なのは、ブランドの価値を決めるのは自分たちではなく、ユーザーだということです。ブランドは企業の頭の中にあるのではなく、ユーザーの頭の中に存在するのです」
>>デザインは『本質の視覚言語化』
違いをかたちにすることにおいて必ず必要になってくることはデザインである。相澤氏はデザインに対する考え方も明確である。セミナーで相澤氏は、「世の中にデザインされていないものはない」と断言し、世の中のあらゆるものがデザインされていることを説明した。さらに相澤氏はデザインの本質について次のように語る。
相澤氏:「デザインとは、常にヒトを中心に考え、目的を見出し、その目的を達成する計画を行い実現化することです」
>>"想い”が人を動かす原動力
相澤氏のセミナーの最後に語られた言葉が印象的だ。
相澤氏:「社会に対してどんな"想い”をもち、どんな人になにを通してどんな価値を提供するのか、そしてどんな未来をつくっていくのか。"想い”があるからこそ人は動く。共通の"想い”のもとで、関わる人たちが実現するために"一緒に行動する"。"想い”に共感した世の中の人々がブランドのファンになる。これが重要です」
第1回定例会、最後のバトンを受け取ったのは、2025年度青葉区若者事業を担当する三浦健輔氏(以下、三浦氏)だった。三浦氏が前に立った瞬間、三浦氏から純粋な感情が溢れ出た。
三浦氏:「私は皆さんのような熱量高い若者たちと今回のような大きなプロジェクトに関われて、とてもワクワクしているんです!」
行政職員から発せられるとは思えないほどストレートで、飾り気のない言葉。三浦氏の目には、純粋な興奮と期待が宿っている。それは、まるで三浦氏が学生時代に戻ったかのような、初々しい輝きだった。
三浦氏:「私はみんなへ、熱量やパッションをもって接していきたい!」
三浦氏のこの言葉には、心からの想いがそこは確かに存在し、行政職員と学生という立場を超えた人と人との真摯な関係がそこに生まれようとしていたのだ。これまでの若者事業はもしかすると、指導者と指導される側として慣れ親しんできた関係性がすでに出来上がっていたのかもしれない。しかし、今回は全く違っている。三浦氏は、学生たちを対等なプロジェクトパートナーとして見ていることが、その言葉の端々から伝わってくる。三浦氏の短くも力強いメッセージは、その場にいた人々の心に確かな火を灯し、パッションの連鎖反応を生み出そうとする瞬間であった。
第1回定例会に参加した若者たちから寄せられた感想は、このプロジェクトが既に彼らの心に、確かなる変革の兆しをもたらしていることを物語っていた。アンケートに回答した参加者全員が「とても満足」「満足」と答えた。その理由を深く探ると、単なる学習体験を超えたものがそこにあることが見えてきたのだ。以下に、アンケート結果の中からいくつかピックアップした若者の声をお届けする。
>>ブランディングへの根本的な認識変革
参加学生:「ブランドとはユーザーが決める無形の資産であり、ユーザーとの約束であるという考え方に新たな気づきを得ました。これまでブランドというと、企業や発信者が作り出すものというイメージがありましたが、実際には受け手であるユーザーの心の中に形成されるものであるという点が印象的でした」
>>デザインに対する新たな視座
参加学生:「今までデザインなどは考えたことがあまりなく、全てのものにデザインされており、このようなデザインがあるからこそ自分たちの今の生活があると知った。デザインに感謝を持ちながら、なんでこのデザインになったのかなどを疑問も考えながらこれから生活していきたい」
>>プロジェクトの継続性への期待
参加学生:「これまでとは違う形で進めていくことが分かり、とても楽しみにしています。参加する人数や組織が増えて、今まで思いつかなかったことにも挑戦することができると感じています」
今回の定例会で若者たちが得たのは、相澤氏から学んだブランディングの概念、そして三浦氏から受け取った熱いパッションだ。しかし、これはまだ始まりに過ぎない。次に彼らを待っているのは、ブランディングの具体的且つ実践的なフェーズである。第2回定例会では、仙台市公園課の職員が登壇し、西公園の150年にわたる歴史と現在の状況について詳細に説明する予定だ。仙台市民を中心に愛され続けてきた西公園の150年の物語、現在抱えている課題、そして潜在的な可能性。これらの要素を深く理解することで、若者たちのブランディング戦略はより具体的で説得力のあるものになっていくはずだ—。
ついに本格的に動き出した、産学官連携という前例のない挑戦。青葉区若者事業は、今まさに新たなステージに突入しようとしている。150年の歴史を背負った西公園と、未来への無限の可能性を秘めた若者たちの出会い。その化学反応が生み出すものに、今こそ注目すべき時である。次回の定例会で明かされる西公園の姿が、今後のプロジェクトにどのような新たな展開をもたらすのか。歴史と今と未来が交差する瞬間を、これからも見逃すわけにはいかない。

Text:Yuki Suzuki
Photo:kensuke Miura/ Yuki Suzuki
Pick Up
これからの未来へ向かって。西公園開園150周年記念フェスに込められた想い
Interview
2025/12/31
仙台のお伊勢様が見守った150年が物語る西公園と櫻岡大神宮の深い絆
Interview
2025/12/24
若者と大人二つの視点が交差する。世代を超えた対話から見つめる西公園
Interview
2025/12/07
大手門をくぐる新体験。2036年に復元される仙台城正門が眠れる価値を呼び覚ます
History
Interview
2026/2/11
江戸からの記憶を掘り起こす。西公園150周年記念講演会で語る、仙台の歴史と未来
History
Interview
2025/11/12
〈PROJECT REPORT#8〉課題定義から導き出した西公園の未来の言語化
Project
2025/12/10
西公園ブランディングプロジェクトのはじまりに迫る |三浦氏 × 木村氏座談会
Interview
2025/10/01
〈PROJECT REPORT#10〉産学官連携で挑んだ『若者が五感で楽しめる秘密基地』の定義づけ
Project
2026/1/28
マレーシア出身の若者からみた、西公園の魅力とはー
Interview
2025/10/22
熱意が集結した本気の産学官連携関係者が想い描く『人づくり』と『まちづくり』
Interview
2026/1/21
「実はいろいろある」150年の時間が折り重なる、西公園という都市の "レイヤー"
Interview
2025/11/26
SLに込められた想い一。小学生の手紙から始まった歴史の伝承
History
2025/10/29
〈PROJECT REPORT#5〉若者たちが本気で見つめる、西公園の強みと弱み。
Project
2025/10/15