Project
2026/1/07
2025年12月20日(土)、青葉区中央市民センターに27名の若者が集結した。彼らが今向き合うのは、〈西公園ブランディングプロジェクト〉である。2025年4月19日にキックオフしたこの挑戦は、仙台市青葉区若者社会参画型学習推進事業(以下、青葉区若者事業)史上初となる産学官連携のもと、前例なき取り組みとして動き出した。タッグを組んだのは、仙台市青葉区、株式会社BLUE SODA、そして東北福祉大学をはじめとする仙台市内の大学機関の三者。開園150周年を迎えた西公園をブランディングすべく、若者が約2年間かけて主体的に取り組んでいる。第9回目の定例会である今回のテーマは、『ブランドテーマの最終決定』。約8ヶ月に及ぶ議論を凝縮し、進むべき指針を一本の杭として打ち込む。会場には大学教授や行政職員も加わり、総勢30名以上がその歴史的瞬間に立ち会った。
本記事では、〈西公園ブランディングプロジェクト〉におけるブランドテーマが最終決定されるまでの過程とそこに込められた若者たちの熱意をここにレポートする。

第9回定例会でまず取り組んだのは、グループ内で新たに最終ブランドテーマ候補を導き出すことである。5分間の個人ワークで、若者たちは自分なりの最終ブランドテーマに繋がるアイデアを付箋に書き出していく。その後、グループ内で議論を重ねて最終的なブランドテーマ候補を1つに決定していく。7つのグループから生まれた最終ブランドテーマ候補は、驚くほど多様だった。それでは一体どのようなアイデアから最終ブランドテーマ候補がうまれたのか。それぞれのグループが辿り着いた1つひとつの軌跡をここに記録する。
『もっと何が行われているのか発信されている公園/自然を楽しみながら休める公園/地域イベントが活発な公園/日常と非日常の間にある公園/食や芸術を楽しめる公園/リラックスできる公園/様々な人が交流できる公園/アクティビティを楽しめる公園/自然を生かしたアスレチックなど運動ができる公園/人との交流が増える公園/広い土地を活かしたイベントを多くやる公園/公園とは感じられないお店やマルシェ/他にはない楽しみ方/西公園から仙台の歴史を読み取れるアート作品/全国にここしかない遊具などをつくる/公園の雰囲気を外にあふれ出すような空間/覚えやすい名前で何かを作れる公園/公園というかたいイメージではなく、柔らかなイメージとしての公園』
『ふらっと寄れる公園/地元のような公園/チャージスポットだらけの公園/常にイベントがある公園/近代的なカフェがたくさんある公園/人生と共にある公園/地域の発信地/音楽が常に響ている公園/何をしたらいいのか分からない/思い出をつくりにくい/印象に残らない公園/ただの広場になっている/いつでも立ち寄る居場所になる公園/周りを気にせずに過ごせる公園』
『公園の力をもう一度/大人も遊べる公園/集合したくなる公園/音楽の聞こえる公園/癒しの時間を過ごせる公園/好きな人と行きたくなる公園/インスタ映えする公園/居場所になる公園/自然が映える公園/BBQができる公園/飲んで騒いで何でもできる公園』
『いつでも自然と触れ合える公園/動物と休日を過ごせる公園/夜ライトアップされる公園/寝転べる 芝生 ハンモック/都会の中の秘密基地/夜にも楽しめる公園/五感で楽しめる公園/SNS映えする公園/自然で癒される公園/川遊びができる公園』
『リノベーションし続ける公園/四季が織りなす西公園/周りを気にせずに過ごせる公園/一人でもみんなでも楽しめる公園/日常に彩りが出る公園/たまり場のような公園/ひと休みしたくなる公園/ピクニックに行きたくなるような公園/イベントがたくさんあり、にぎやかな公園/屋台やキッチンカーなど食べられるものがある公園/動いても座ってもいい公園/オシャレで行くと自分格好いいと思える公園/何をしてもいい公園/誰が行ってもいい公園/邪魔の入らない自分だけの空間を過ごせる公園/自然に囲まれリフレッシュできる公園/景色を見て楽しむ伝えたくなる公園/にぎやかだけど静かな公園/開放的に快適に/自分の空間がある公園/若者がたくさんいる公園/日常とは異なる公園』
『流行にのっている公園/オシャレなカフェがある公園/運動ができる公園/リフレッシュできる公園/人々の交流がある公園/ふらっと寄れる公園/色々な人々とゆるくつながれる公園/大学生の日常に溶け込む公園/都市部の中で自然を感じられる公園/安心感がある公園/日向ぼっこが簡単にできる公園』
『ボールなどの道具貸出/SNS映えする公園/好奇心のハブ/わくわく 楽しい 新しいに出会える公園/パッと来てパッと遊べる公園/自然と人工 融合の公園/ごはんがテイクアウトできる公園/散歩をしたら景色がどんどん変化する公園/ひまつぶし/駅前にはない静けさ/リフレッシュするなら西公園みたいな!/自然と自然を求める公園/バンジージャンプ/日本酒 カクテルが飲めるイベント』
各グループからの発表が終了すると、会場には前回までに磨き上げられた6つの候補に、今日この場で生まれたばかりの7つのアイデア加わった13の最終ブランドテーマ候補が出揃った。どれも若者たちが西公園の未来を真剣に、そして楽しみながら考え抜いた証である。

次に、最終ブランドテーマ候補を13から6に絞る第1弾投票が始まった。投票の基準は極めてシンプルで最も本質的な『自分たちが本当に行きたいと思えるかどうか』。理屈ではなく直感と本音に従い、13の候補がふるいにかけられていく。開票の結果、生き残ったのは以下の6つだ。
五感で楽しめる秘密基地
『映え』と『日常』が共存する公園
自由な公園(Freedom Park!)
点で遊んで、線で繋がる公園
コンテンツの源 ハートキャッチ西公園♡
学生の生活を豊かにする公園
第1弾投票を勝ち抜いた6つの最終ブランドテーマ候補。ここからは、同じテーマを支持した若者同士が即席のチームとなり、最終決戦に向けた運命のプレゼンを練り上げる時間だ。各グループに与えられた準備時間はわずか10分。限られたリミットの中で、いかにしてライバルたちの心を奪うか。会場のあちこちで、戦略的な議論が火花を散らす。言葉を磨き、見せ方を研ぎ澄ます若者たちの表情は真剣そのものだ。そして始まったプレゼン大会は、1分間にすべてを懸ける熱狂のステージとなった。 あるグループは、剥き出しの熱量でテーマへの愛を叫び、身振り手振りを交えて聴衆の心を揺さぶる。またあるグループは、即興のミニ演劇を披露。会場は笑顔に包まれ、空気が一気に弛緩と高揚を繰り返していく。
自由な発想、ほとばしる熱意、そして本気の遊び心。1分間という短い時間の連続が、西公園の未来を動かす大きなうねりへと変わっていく。そこにあったのは、若者たちが本気で挑戦し、心からこの瞬間を楽しんでいる景色だった。

プレゼン後の最終投票。会場を包むのは、これまでの議論の重みを感じさせる濃密な空気だ。判断基準はこれまでと変わらず、『自分たちが本当に行きたいと思えるかどうか』である。静まり返る中で行われた集計作業。2025年4月のキックオフから積み重ねてきた思考のすべてが今、一つの形になる。
結果は、『五感で楽しめる秘密基地』の勝利。
数多くの票を獲得したからこそ決まったこの結果が、このブランドテーマに宿る若者からの共感の強さを物語っていた。そしてこの瞬間は若者たちが自らの手で、西公園の新しい歴史の1ページを書き換える瞬間でもあった。
第9回定例会の幕が降りた後に若者たちが綴った、この8か月間での自分自身の学びや気づきを振り返る『中間自己評価シート』には、熱気を帯びた本音が溢れていた。そこに書き込まれた言葉の一部を、ここに引用する。
「普段の生活でも、西公園のニュースを無意識に追っている。地域への関心は、いつのまにか『自分たちの問題』という強い意識に変わった」
「多方面の視点に触れることで、自分の視野がいかに狭かったかを知った。新しい発見の連続だった」
「『何もない』と思っていた場所は、実は『何でもできる』という無限の選択肢がある場所だった。公園の在り方、若者を呼ぶための工夫。そのすべてが新鮮な驚きだった」
「大学や立場の垣根を超えた交流。このプロジェクトに参加しなければ、一生交わらなかったかもしれない繋がりがここにある」
第9回定例会を終え、〈西公園ブランディングプロジェクト〉は次なるフェーズへと移る。決定した最終ブランドテーマ『五感で楽しめる秘密基地』を指針に、2026年はいよいよブランドコアの策定と戦略設計のフェーズへと突入していく。この最終ブランドテーマをどう具体的な戦略に落とし込み、どんなアクションプランを描くのか。そして、仙台市長や青葉区長へ届ける提言にどのような魂を込めるのか。若者たちの挑戦は、ここからが真の本番だ。
プロジェクトが完結したとき、西公園はどんな風景を見せてくれるだろうか。そして何より、関わった若者たちの眼に映る社会の景色はどう変化しているだろうか。彼らが描く『西公園の未来』は、単なる公園の再生物語に留まらない。若者が社会を想い、社会が若者を育む。そんな新しい循環を生み出すための壮大な物語だ。その挑戦は『五感で楽しめる秘密基地』という言葉に結実し、2026年も仙台の地で着実に、そして鮮やかに歩みを進めていくに違いない。
Text:Yuki Suzuki
Photo:kensuke Miura
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