Project
2025/9/01
2025年4月19日、仙台市青葉区若者社会参画型学習推進事業(以下、青葉区若者事業)として前例のないプロジェクトが始動する。約2年間をかけて、仙台市青葉区をはじめ、主にブランディング・広告・デザイン制作を行う株式会社BLUE SODA、そして東北福祉大学を中心とする大学機関による若者事業初の産学官連携のもと、20名を超える若者たちが主体となり、今年で150周年を迎える西公園のブランディングに取り組む。「若者が社会を自分ごととして捉え、自発的・自主的に行動できる人になってほしい」という主催者の想いを受け、若者たちは本格的なブランディング手法を実践的に学びながら、西公園の新たな価値を創造していく。そして最終的には、彼らが導き出した成果を仙台市長や青葉区長へ直接発表することを目指す。
プロジェクトが完了する2027年、西公園はどのようなブランディングを遂げているのか。そして何より、このプロジェクトに関わった若者たちと社会との関係性はどのように変化しているのか。このプロジェクトは、単なる西公園のブランディングにとどまらず、若者が社会を本気で考え、社会が若者を育む、そんな新しい循環を生み出す壮大な挑戦である―。

若者事業とは仙台市の各区にある中央市民センターが取り組む事業の一つである。これは、若者が地域づくり活動に参加し、さまざまな人々との交流を通じて、身近な地域をより良くすることへの意識を高め、自発的・主体的な活動を学ぶ事業である。この若者事業は基本的に単年で終了する。例年だと4月に始まり、年明けに成果発表会を行って完了する流れだ。
青葉区若者事業も、2024年度の事業終了が迫る頃、来年度のテーマが検討されていた。その頃、2024年度青葉区若者事業を担当していた青葉区中央市民センター職員木村氏は、あるイベントに参加した。それは、株式会社BLUE SODA代表取締役の相澤氏が統括する利府町地域おこし協力隊ブランディングプロジェクトが主催する、『ブランディング×地方創生を学ぼうイベント』だった。このイベントは、セミナーやワークショップを通じてプロからブランディングを実践的に学び、そのイベントに参加する若者たちが本気で利府町のブランディングに取り組むものであった。木村氏は当時、他の区から出されていた『ブランディング×地方創生を学ぼうイベント』の案内を見て、気になって見学に訪れた。当初は見学だけの予定だったが、主催者側の提案で、急遽若者と共にイベントに参加することになった。そこで木村氏は、プロからの学びの深さと、イベント自体が地域に対して大きな価値を生む可能性を肌で感じた。イベント終了後、木村氏と相澤氏が挨拶を交わした際、「このイベントをぜひ青葉区の若者事業でも取り組みたい。力を貸してほしい」と木村氏から提案があった。そこから前例のない若者事業実現に向けての歯車が、急に動き出したのだ。

挨拶から一か月後、青葉区中央市民センターと株式会社BLUE SODAによる初打ち合わせが実施された。そこでは、2025年度青葉区若者事業の担当者となる三浦氏も同席をした。打ち合わせでは、改めて木村氏と三浦氏から行政としての想い、そして担当者としての熱い想いが伝えられ、その熱量が相澤氏の心を動かした。その後も何度か打ち合わせを重ねたのちに、ついに青葉区初となる企業連携を加えた若者事業が実現することになったのだ。
連携の輪は、行政と企業だけに留まらなかった。これまでも青葉区若者事業に深く関わってきた東北福祉大学には、2025年度から現代社会が抱える多様な課題解決に必要な知を広く複合的に習得する『共生まちづくり学部』が新設されたこともあり、2025年度東北福祉大学の西公園ブランディングプロジェクト参画が決定したのだ。これにより、若者事業としては初となる、歴史的な産学官連携がここに結実したのである。
そして2025年4月、この歴史的な連携を象徴する初の三者間打ち合わせが開催された。行政、企業、大学、それぞれの視点から活発な意見が交わされ、互いの強みや視点が補完し合う、まさに理想的な関係性の構築がされた瞬間でもあった。さらに、今回の青葉区若者事業は多くの学生たちの心を揺さぶった。三浦氏が、青葉区の各大学にこの事業を告知したところ、驚くべきことに東北福祉大学の学生に加え、東北大学、東北学院大学、宮城教育大学、宮城学院女子大学からも、自ら手を挙げ参加を希望する学生が続出したのである。これは前例なき産学官連携を完成させただけでなく、青葉区内の大学の垣根を超えた学生同士の連携をも実現した。これにより今回のプロジェクトは、まさに始まる前から連携の輪の限界が全く見えない、革新的な未来への道筋を確かに示すことになったのだ。

今回の青葉区若者事業と従来の若者事業では、違いが明確である。まず、大きな違いはスケジュールだ。例年、若者事業は1年間で完結する形式であったが、そこにはある課題が生じていたという。それは、これまでの企画による成果の持続化がほとんどできていないという課題である。若者事業ではイベント開催や企画立案など、毎年多くの若者と共に活動を続けてきた。年度末には報告会を開催できるほどの活動成果を生み出してきたが、その成果が現在も持続しているかといえばそうではなかったという。そこで、これからは今後も地域で持続する成果内容を目指したいと、青葉区中央市民センターは考えていた。そこで出会ったのが株式会社BLUE SODAであり、ブランディングという手法である。実際にBLUE SODAの相澤氏が「ブランディングとは違いを形にしていくことであり、一生かけて行っていくものである」と語るように、この手法を活用することで、若者たちが生み出す成果を今後の社会に持続させていくことが可能となるのだ。
実際にブランディングを進めていくにはいくつかプロセスが存在する。現状分析を行い、ブランドコアを確立し、戦略設計を立てて、ビジュアルデザインに落とし込んでいくという流れだ。この一つひとつのプロセスの中にも、いくつもの工程や目的が存在し、単にオシャレに魅せていくこととは違うのである。この工程を本格的に進めて行くには1年間では到底成し遂げられないほど、ブランディングは奥深い。だからこそ、2025年度の青葉区若者事業は2年間かけて行うことを決定した。ただ、このような大規模かつ革新的なプロジェクトを成功させるためには、多岐にわたる専門知識とリソースの結集が不可欠であるため、本プロジェクトでは前例のない産学官連携が重要となる。地域を支える行政、専門的なスキルを提供する企業、若者を最も近くで支える大学、そしてこのプロジェクトに参加してくれる学生中心の若者たち。これらは一つとして欠かすことのできない存在であり、密接な連携が不可欠なのだ。
西公園ブランディングプロジェクトの目標は、若者たちがつくり上げた成果物を仙台市長に提言することである。これまでは、各区の若者事業参加者が集まって発表会を行うのみであったが、今回は大きく変化した。「若者が社会を自分ごととして捉え、自発的・自主的に行動できる人になってほしい」という若者事業自体の本質的な目標を全力で達成しに行く青葉区中央市民センターの本気度と覚悟が見て取れる。その想いに共感した企業と大学、若者が力を合わせることにより、地域社会に新たな価値と持続的な活力を生み出す、画期的なプロジェクトとなっていくのだ。

2025年4月19日。この日、青葉区中央市民センターから、前例のない壮大な挑戦の幕が上がる。行政、企業、そして大学が一体となり、プロジェクトの主人公である区内の様々な大学から集まった若者たちが、単なる公園のブランディングに留まらず、自らが社会を動かす当事者として、未来の仙台を、そして日本を創り出すための第一歩を踏み出す。
2年間の歳月をかけ、西公園の新たな価値を創造し、その成果を仙台市長に提言することを目指すこの挑戦が、これからどのような未来を描き出すのか。そして、このプロジェクトを通じて育まれる若者たちが、社会とどのような新たな関係性を築き上げていくのか。その全貌が明らかになるこの歴史的瞬間の行方を、今こそ注視すべきである。
Text/Photo :Yuki Suzuki
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