仙台の未来は青葉山から。観光戦略課が語る意図と目的のある観光まちづくり。

      • Interview

      2026/6/25

      仙台の歴史は青葉山から始まり、そして仙台の観光の未来もまた、青葉山から動き始めている。そうした施策を推進するのが『仙台市 東北連携・観光交流部 観光戦略課』(以下、観光戦略課)だ。この部署は、仙台の観光に関する施策全般を担っている。今回、TIME MACHINE NISHI PARKは観光戦略課の日下和彦氏課長(※取材当時)(以下、日下氏)にインタビューを行った。日下氏へは、仙台市が2025年3月に策定した『仙台市観光戦略2027~Into a New Era~』(以下、『仙台市観光戦略2027』)の内容から、西公園とも関係が深い青葉山エリアへの取り組み、そして伊達政宗公没後400年や東日本大震災から25年の節目を迎える2036年を見据えた動きまで話を伺った。

      仙台市 東北連携・観光交流部 観光戦略課 日下和彦課長(※取材当時)


      『観光課』から『観光戦略課』へ。名称に込めた意志とは。

      観光戦略課は、以前は『観光課』という名称だった。2025年4月に名称が変わったのは、2025年3月に新しい観光戦略として『仙台市観光戦略2027』を策定したことがきっかけだ。宿泊客を増やすための施策をはじめ、コンテンツ造成、受入環境整備、プロモーションなど観光全般を担いながら、その戦略を実施していくという意味を込めて『観光戦略課』と改めたのだという。その観光戦略課のミッションについて、日下氏はこう話す。

      日下氏:「交流人口の拡大というのが主なミッションです。人口減少社会に突入してしまっている中で、人が一人いなくなると地域に落ちるお金も減ってしまう。それならば観光客にたくさん来てもらって消費につなげる。このような観点から、私たちは観光客の誘致などの『交流人口』の拡大の取り組みをしています。」

      観光庁のデータによれば、定住人口が一人減った際の消費の落ち込みを、国内外からの観光客の増加で補えるという試算がある。人口減少が避けられない中で、観光による交流人口の拡大は地域経済を支える手段の一つとして、ますます重要になっている。


      『来てもらう・泊まってもらう・また来てもらう』。観光戦略の3つの視点。

      『仙台市観光戦略2027』では、2027年までに、年間の延べ宿泊者数を680万人泊とする達成目標を掲げている。前の戦略(『仙台市交流人口ビジネス活性化戦略』)では、年間延べ650万人泊を目標として定め、実際に2024年は650万人泊を上回った。新たな目標の達成に向けた3つの視点が、『来てもらう・泊まってもらう・また来てもらう』である。

      『来てもらう』については、まだ仙台に来たことがない人が多いため、まずは足を運んでもらうことを重視している。しかし、来てもらうだけではお金が落ちない。そのため『泊まってもらう』ことで滞在時間を増やして消費してもらう。だが、ここで満足してはいけないという。3つ目の視点『また来てもらう』こそ、日下氏は大切だと語る。

      日下氏:「Web調査で、仙台に来た人がどれだけお金を使ってくれたかを調べていますが、実はリピーターの方がずっとお金を使ってくれるんです。もう一回来てもらう、そうすればもっともっと地域経済の活性化につながるということで、3点セットで考えています。


      6つの重点プロジェクトが描く、仙台観光の輪郭。

      『仙台市観光戦略2027』には、0番から5番まで6つの重点プロジェクトがある。どれかが優先というわけではなく、6つすべてに取り組むことで、国内外からの誘客につなげていく考えだ。

      プロジェクト1『心弾むエモーショナル都市の創造』では、仙台ゆかりのアニメや漫画といったコンテンツを活用した誘客を目指す。たとえばバレーボール漫画『ハイキュー!!』は国内外に多くのファンを持ち、仙台が舞台の一つとなっていることから、コラボした取り組みによる誘客を行っている。また、仙台七夕まつりの開催期間にあわせて、伊達政宗公騎馬像の特別ライトアップ等を行う「仙台七夕ナイトフェス」の開催など、夜景観光(ナイトコンテンツ)の推進もこのプロジェクトの一環だ。

      プロジェクト2『Sendai Urban Resortの推進』では、仙台の地理的な特性を活かした施策を展開する。100万都市でありながら、西部には山や温泉、東部には海があり、各地へ30分ほどでアクセスできる。そうした環境を活かしながら、中心部だけでなく東西のエリアにも観光客を呼び込む仕掛けを考えており、課題である移動手段への対策として、二次交通の拡充も合わせて進めていく。

      プロジェクト3『「Another JAPAN, Sendai, TOHOKU」の発信』では、インバウンド誘致を主な目的としている。東北への外国人観光客のシェアはコロナ前後ともに1~2%台にとどまっており、東京・大阪・京都などと比べて伸びていない。オーバーツーリズムが大都市圏で話題になっているように、賑わいは大都市圏に集中しており、東北は伸びしろがあると日下氏は説明する。東京や大阪、京都をすでに訪れた観光客に向けて、『Another JAPAN』として仙台・東北の魅力を発信していく。また、外国人が訪れた際に情報を得やすいよう、多言語のサイン整備なども進めていく。

      プロジェクト4『+(プラス)観光の推進』では、国際会議やプロスポーツ観戦など、観光以外の目的で仙台を訪れた人に観光を促し、宿泊や連泊、地域での消費拡大を目指している。

      プロジェクト5『持続可能な観光地域の形成』では、観光による消費が地域の民間事業者にきちんと還元され、経済として回っていく仕組みを作ることを目指している。観光産業は裾野が広く、ホテルだけでなく飲食や清掃など多くの産業が関わっている。民間事業者がきちんと稼げる観光地域をつくることが、持続的な地域経済の活性化につながると日下氏は考えている。そして、これらとは別に『0番』として設定されているプロジェクトがある―。


      なぜ『0番』なのか。

      『次代へつなぐ青葉山エリアの価値の深化』と名付けられたプロジェクト0は、他のプロジェクトとは異なる時間軸で動いている。青葉山エリアは、伊達政宗公が城を築いたことで仙台の歴史が始まった場所であり、仙台城跡や伊達政宗公騎馬像がある観光の拠点でもある。現在、2036年の伊達政宗公没後400年に向けて、大手門の復元や音楽ホールと震災メモリアルの複合施設建設など、さまざまなプロジェクトが動いている。『仙台市観光戦略2027』の計画期間は3年だが、青葉山エリアの取り組みはそれでは終わらないため、特殊な『0番』として位置づけているのだという。

      日下氏:「観光交流の拠点でもある青葉山の価値の深化を図り、中長期的な視点でこの青葉山の魅力をより高めていく、磨き上げていく。そういう取り組みなので、特殊な0番という数字を使って、プロジェクトの最初に示しているということです。」

      青葉山エリアには、仙台城跡や伊達政宗公騎馬像に加えて伊達政宗公の廟所である瑞鳳殿もある。さらに青葉山からは仙台の街を一望でき、夜には期間ごとに色が変わる騎馬像のライトアップとともに夜景も楽しめる。仙台の歴史を感じながら、昼も夜も過ごせるエリアとして、さらなる魅力アップのための取り組みが可能と日下氏は感じている。


      青葉山を磨き上げる、その実践のかたち。

      青葉山エリアを『磨き上げる』取り組みの一つとして、2025年10月の4日間、東北芸術工科大学と連携して『仙台城跡でひとやすみ』を実施した。芝生エリアを設けてゆっくり過ごせる空間を作るもので、コーヒー等の飲料の提供なども行い、期間中に約800人が芝生に腰を下ろした。取り組みの背景には、日下氏のこんな問題意識がある。

      日下氏:「仙台城跡には伊達政宗公騎馬像を目当てに非常に多くの観光客の方がいらっしゃいます。一方で、一部の方からはお城がなくて残念だったという声を聞くこともあります。市民の方も含めてもっと多くの方に仙台城跡に来ていただいて楽しんでほしいという思いから、新しい楽しみ方ができるというのをどんどん提示していきたいということで、こういう取り組みを行いました。」

      青葉山エリア以外でも、観光戦略課はさまざまな仕掛けを打っている。2026年1月から2月にかけて実施した新たな冬のイルミネーションイベント『SENDAI Bright-Nights STORY』もその一つだ。1〜2月は観光客が最も少ない時期で、宿泊・観光事業者にとって厳しい閑散期にあたる。その時期に人を呼ぶための仕掛けが必要だという事業者からの声を受け、光のページェントの事務局と連携して立ち上げた新たなイベントだ。

      写真:SENDAI Bright-Nights STORY


      2036年、ふたつの節目に向けて。

      観光戦略課が現在力を入れて取り組んでいることの一つが、大河ドラマの誘致だ。大河ドラマは一年間かけて主人公とその関連エリアを掘り下げていく構成上、放送期間中の全国的なプロモーション効果が非常に大きい。その効果を仙台にもたらすべく、2036年という年を目標に据えてNHKへの働きかけを続けている。2036年は、伊達政宗公没後400年であると同時に、東日本大震災から25年の節目にあたる。伊達政宗公の時代にも大きな地震と津波があり、その復興を指揮したのが伊達政宗公だった。震災から立ち上がった現在の仙台と重なる姿が、そこにあるということだ。

      さらに、支倉常長をヨーロッパへ送り世界に目を向けた伊達政宗公は、留学生を増やしダイバーシティあるまちづくりを進める今の仙台とも重なる。単なる節目の年ではなく、仙台という都市の歩みを伊達政宗公の姿と重ねながら全国・世界に発信できる年として、2036年には特別な意味がある。

      かつて放送された『独眼竜政宗』は、歴代平均視聴率1位を記録した大河ドラマだ。伊達政宗公というコンテンツへの関心は今も高く、誘致に向けた署名活動はすでに2万人を超えており、行政だけでなく市民も一緒になってこの取り組みを動かしている。


      市民と一緒に、街への愛着を育てていく。

      インタビューの最後に日下氏は、どんな施策も行政だけが動くのでは意味が薄れると話す。

      日下氏:「市民から応援してもらい、一緒になって進めることで、施策の意味が高まると思います。うまくいかないことがあっても、市民の声を聞きながら改善し、また新しいものをつくっていく。そのプロセスこそが重要だと思っています。」

      大河ドラマが仙台を描けば、仙台という都市が全国に、さらには海外にも発信される。それはシビックプライドという自分たちの都市への誇りにもつながると日下氏は言う。行政と市民が一緒になって動くことで、観光施策はただの集客活動を超えて、街への愛着を育てる取り組みへと広がっていく。

      また、若者の参画についても、日下氏は期待を寄せる。これまで学生が施策の検討過程から関わる機会は少なかった。だからこそ、『西公園ブランディングプロジェクト』のように若者が主体となって地域に関わる取り組みは、行政側にとっても歓迎すべきことだと日下氏は言う。

      日下氏:「仙台で活動する若者の皆さんと一緒に新しい施策を作っていくというプロセスは、今後の仙台市にとっても重要であり、皆さんの経験や責任にもつながる。ぜひ皆さんの取り組みをもっと発信して、今後とも頑張っていただきたい。」

      2036年に向けて、青葉山エリアではさまざまなプロジェクトが同時に動いている。観光戦略課もその一翼を担いながら、にぎわい創出のイベントやライトアップなど、青葉山をフィールドにした取り組みを今後も続けていく予定だ。観光戦略課は今後も様々な観光資源の磨き上げに取り組みながら、より多くの人に長く滞在してもらえる場所にしていくことを目指す。青葉山エリアの魅力をより多くの人に届けたいという想いは、実際に日下氏の言葉にも表れている。

      日下氏:「ぜひ多くの方に青葉山に足を運んでいただいて、仙台の魅力を再認識していただければと思います。」

      観光戦略課が仙台の魅力を全国・世界に向けて発信しようとしているように、『TIME MACHINE NISHI PARK』は西公園とそこに関わる人々の物語を発信し続けている。届ける規模も手段も異なるが、地域の魅力を伝えようとする取り組みは、形を変えながらこの仙台というまちのあちこちで今日も動いている――。


      Text:Rei Takahashi
      Photo:Yuki Suzuki


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