Interview
2026/4/15
仙台市の街を歩けば、至る所に市民活動の種が落ちている。だが、市民活動の実態を『真面目な人たちが集まる、とこか堅苦しいもの。』と捉えてはいないだろうか。実はそうではなく楽しいものだと説いてくれるのは、仙台市青葉区一番町に拠点を構える『仙台市市民活動サポートセンター(以下、サポートセンター)』のセンター長・佐藤司氏(以下、佐藤氏)である。佐藤氏は自らを“黒子”と称しながら、仙台市というフィールドにおいてさまざまな仕掛けを生み出している。
今回実施した佐藤氏へのインタビューを通して見えてくる、サポートセンターのセンター長流・市民活動との関わり方、そして佐藤氏がインタビューで語った、「杜を謳歌する。」とは一体何だろうか。本記事では、佐藤氏の言葉を通して市民としての生活を新しい視点から覗いていく—。

仙台市市民活動サポートセンター センター長・佐藤司氏
仙台市の市民活動の歴史を紐解くと、1960年代の『脱スパイクタイヤ運動』にまで遡るという。粉塵問題を自分たちの手で解決しようとしたその熱量が、仙台市に「自分たちの街を自分たちで考えるんだ!」という土壌を作った。かつて、当時の市長を始めとする市民の動きに理解あるリーダーたちが多く存在していたことも、この街に『協働』という言葉を根付かせた要因だ。その流れを汲み、1999年に誕生したのがこのサポートセンターである。
佐藤氏:「ここは市民活動団体の課題解決・魅力向上や、ボランティア・まちづくりに興味がある多様な人たちの連携・交流を支援するための施設です。協働によるまちづくりを進めることが、私たちの大きな理念です。」
サポートセンターでは、年間約1,100件を超える市民活動相談が寄せられ、団体設立から助成金の獲得、さらには連携相手探しまでその内容は実に幅広い。そしてサポートセンターには、総務をはじめとする情報や企画などのチームがある。企画チームでは、相談・人材育成・協働に関する機会の提供・事業の提供・調査研究などの活動を行っている。2025年度の具体的なイベント・講座としては、交流事業として中学校の部活動の地域展開をテーマにした企画や、デフリンピックの応援企画、地域の情報と編集をテーマにしたイベント、民俗・郷土芸能イベント、若者に特化した取り組みなどが実施された。また、サポートセンターが関わった市民活動の情報は、広報誌『ぱれっと』として紙とウェブの両媒体で発信されており、仙台市内で実際に行われている市民活動の紹介のほか、協働によるまちづくりの紹介記事も掲載されている。
サポートセンターが大切にしているのは、現場に自ら足を運ぶ『アウトリーチ』である。市民活動団体の困りごとや成果としての取組を現場に赴いて伺う。必要であれば様々な経験をしてきた実践者や専門家をつないでいく。また、サポートセンターは1999年の設立以来活動を続けてきており、全国初の官設NPO営の施設として認知されてきた存在である。その歴史と実績から全国的にも一目置かれているからこそ、常に先駆的に取り組んでいく責任があるという意識を持っている。また、他機関との連携・研修活動にも力を入れており、県内の同種施設が主催する情報交換会や全国規模の支援組織が実施する研修にも参加したり、全国の中間支援施設で働くスタッフとも積極的に交流・情報交換を行ったりしている。

そのような姿勢のもと、人とのつながりを大切にしながら、現場にいかに貢献できるかを考え行動し続けている。特に印象的な事例として佐藤氏が挙げたのは、20年以上スポーツボランティアを続けてきた佐藤氏自身の活動としても行っている『センサリールーム』の取り組みである。これは感覚過敏を持つ子どもたちが、音や光を気にせずスポーツ観戦を楽しめる環境づくりであり、福祉団体とスポーツボランティアをサポートセンターがつなぎ合わせたことで実現した協働の取り組みだ。サポートセンターと他機関との関係は一度限りの関係ではなく、イベントヘの参加や逆に市民活動団体がサポートセンターを訪れる相互訪問などを通じて、継続的なつながりを維持している。これは、現時点では課題が顕在化していなくても将来的に問題が生じた際に迅速に連携できる体制としても有効となる。支援のあり方としても、個々の事象を点として捉えるのではなく、地域全体を面として俯職し、不足しているものや課題を把握しようとする視点を大切にしている。
佐藤氏:「私たちは依存関係をつくるつもりはありません。サポートセンターが用意してくれると思われたらその団体の自立的な活動を止めてしまいかねません。だからこそ、あえて伴走している実感を相手に与えないような関わり方を意識しています。ただそれでも、サポートセンターは支援においてこれまで築いてきた多様なつながりを活かしながら、改めて自発的で非営利で公益的な活動として見つめ直し、次のアクションにつながる心の声を向き合う存在でありたいです。」
また、サポートセンターが見つめているのは、相談者が口にする主訴の先にある真実だ。例えば、相談に来た人の話を深く聞けば別の課題を解決したいということがある。そのような相手の悩みを深掘りする冷静かつ温かい眼差しこそ、サポートセンターの支援を唯一無二のものにしているのだ。
ここで話は、現在多くの市民団体が関わっている西公園に移る。佐藤氏は個人的な西公園との最初の記憶を語ってくれた。それは佐藤氏が3歳の頃、立町小学校近くの施設に通っていたときの帰り道に親と散歩した光景や、かつて野球場だった場所が今や櫻岡大神宮横の桜の名所となって空間が明るく開かれた場所へと変化してきた歴史だった。
佐藤氏:「仙台市民にとって西公園は誰もが何かしらの縁を持っている場所。そこに関わる人々とともにもこれからも市民として楽しみたい。そこに関わる人たちが何か新しいことを始めようとした時、私たちはいつでも隣にいたいです。」
佐藤氏が説くのは、公園や街を利用するという享受するだけの姿勢から一歩踏み出し、“楽しみ合う・面白がる”という魅力を創造する姿勢への転換である。
佐藤氏:「市民活動には3つの原則があります。課題解決や魅力向上の取り組みである市民活動は、自発的であること、営利を目的としないこと、そして公益的であること。これらを踏まえつつ、面白さを共有して楽しみ合っていく取り組みが街の新たな一面となり、豊かさにつながると思います。」
西公園では、少し前に『ハンモックを吊るして誰でも自由に過ごせる場所を作る。』という市民活動が行われた。これは一見遊びのようにも見えるが、街を面白くするという魅力の向上につながっている。佐藤氏自身も、自身の楽しさをオープンにシェアしつつ、一人ひとりの楽しさの発見が街を豊かにすると信じているという。
佐藤氏:「市民活動って、なんだか堅苦しいイメージがありませんか?(笑)」
佐藤氏はそう笑う。この心理的なハードルを越えてもらうために、サポートセンターはいくつもの工夫を凝らしている。例えば1階に置かれた様々なチラシ。以前はジャンル別だったものをあえて日付順に並べ替えている。
佐藤氏:「自分の興味とは関係ない情報にふと出会ってほしいんです。入り口付近は気軽なイベント情報を、奥に進むほど専門的な助成金情報を配置する。グラデーションを作って敷居を下げているんです。」

また、サポートセンターの広報誌『ぱれっと』は手に取りやすいポップなデザインと内容の工夫を通じて認知向上を図っている。学校や各市民センター、近隣のコンビニエンスストアなど身近な場所にも配架されており、こうした取り組みが評価され、近年は他団体から情報発信の方法についての相談が寄せられることも増えてきている。情報発信はどの団体にとっても共通の課題であるという認識のもと、サポートセンターとしても今後さらに情報発信力の強化に注力していく方針である。そして佐藤氏は、大切にしている市民としてのテーマを『謳歌』と語る。
佐藤氏:「課題解決や魅力向上のために自発的で非営利で公益的に動く。これが市民活動の定義ですが、その前にこの街で暮らす市民としての生活は楽しくしたい。つまらないなら楽しくなるように視点を変え、この街をどう満喫できるかを考えることから結果としてその人らしい市民活動につながる気がします。また、西公園の杜を謳歌する方法は市民の数だけあると思います。」
佐藤氏:「10年後、20年後、サポートセンターというこの場所はこの建物だけではなくなっているかもしれません。」
佐藤氏が言うには、例えば大学の中、企業の中、あるいは西公園の片隅。仙台市の至る所で『サポートセンターのような機能』が同時多発的に現れ、人々による対話の場を持って誰かを支え始めるという、つながりが有機的に広がっている状態のことである。そのために今後は、『アウトリーチ』の範囲をさらに拡大し、全国へと足を延ばす計画だという。震災を経験した他都市の現状や多様な主体による好事例などをインプットし、仙台市の市民活動に有益な情報をフィードバックする。仙台市内で更に課題解決や魅力向上につながるよう、新しい風を吹き込むという考え方だ。そしてインタビューの最後には、大学職員でもあった佐藤氏から若者たちに対して次のように願いを語った。
佐藤氏:「就活サイトには載っていない、楽しそうに街で生きている市民の姿を見てもらえるようにしたい。仕事とは別に市民生活の中の課外活動としてこの街を楽しんでいる市民一人ひとりの姿を今の若者たちに見てほしいんです。その中には、大学生であれば『仙台市で4年間過ごしてよかった!』と思える出会いとなる人物もきっといるはずです。そして次は、あなたがそのような存在として、次の若者に姿を見せる存在になってほしいと願っています。」

写真提供:仙台市
もしこの記事を読んだあなたが仙台市で何か新しいことや面白いことを始めたくなった時には、まずはサポートセンターヘ訪ねてみてほしい。サポートセンターは、そして佐藤氏は、あなたが市民として最初の一歩を踏み出すその瞬間を、いつでも支える準備をして待っている。
Text:Minami Nakamura
Photo:Yuki Suzuki
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