「昔、校舎は西公園にあった。」立町小学校と西公園がつくり出す150年の絆が紡ぐ未来。

      • History

      • Interview

      2026/4/01

      仙台市中心部に位置する西公園。2025年度に開園150周年を迎えたこの場所には、かつて仙台市立立町小学校(以下、立町小学校)の校舎が建っていた。現在の立町小学校校舎は西公園に隣接しており、西公園との深い縁を今に受け継ぎながら子供たちの豊かな学びの場として西公園を活用している。

      本記事では、2025年度まで立町小学校校長を務めていた川村美智氏(以下、川村氏)に立町小学校と西公園による歴史と現在、そしてこれからの未来への想いを伺った。

      写真:仙台市立立町小学校 前校長 川村美智氏
      (インタビューは川村氏が立町小学校校長を務められているときに実施しております。)


      西公園に立っていた校舎と今も残る歴史の証人。

      川村氏:「立町小学校は今もそうなのですが、西公園の隣にあるということで、そもそもすごく関わりが深いところです。」

      川村氏がそう語りながら見せてくれたのは、昭和12年頃に描かれた一枚の絵だった。そこには、現在の西公園に建つ立町小学校の校舎が描かれている。明治27年2月に建てられたこの校舎は、戦災で焼失するまで西公園の地で子供たちの学び舎として存在していた。立町小学校は創立153年の歴史ある学校だが、度重なる火災により当時の建物は残っていない。しかし、歴史の証人となるものは確かに存在する。職員玄関を入った右側に、写真にも映っている大きな松の根っこが保存されているのだ。川村氏は絵に描かれている立町小学校校舎を指さしながら次のように説明してくれた。

      川村氏:「(絵の中の)校舎の前に描かれている大きな松の根っこが、この学校に現存しています。」

      古い絵に写る校舎の正門付近には、立派な松の木が立っている。その松の根っこが今も立町小学校に残っていることがかつて西公園の地に学校があった時代を静かに物語っている。そしてもう一つの歴史の証人となるものが、校長室に飾られているケヤキの鉢だ。戦後、このケヤキは鉢に加工されて学校に寄贈された。今も大切に保管されているこの鉢もまた、西公園に生えていたケヤキから作られたものである。

      川村氏:「このように立町小学校と西公園は、とっても縁深いことが伺えるエピソードがたくさんあります。」

      川村氏の言葉通り、立町小学校と西公園は、単なる近所の公園という関係以上に、深い歴史的つながりによって結ばれていることが分かる。


      街なかにありながら、豊かな自然体験ができる場所。

      現在の立町小学校は、西公園に隣接する場所に校舎を構え、日常的に西公園を教育活動に活用している。

      川村氏:「立町小学校は地域の中心地にあるので、西公園や戦災復興記念館、せんだいメディアテークなど、地域の教育資源に恵まれています。それらを活用した学習は100近い数にのぼるんですよ!」

      その中には西公園を使った学習ももちろん含まれ、自然体験の中心的な場所として活用されている。立町小学校が建つ場所は仙台市の中心部という立地でありながら、青葉山と西公園、そして広瀬川という自然資源に恵まれた環境。この恵まれた環境を最大限に活用することで、街なかの子供たちに豊かな自然体験を提供しているのだ。虫捕りや季節の遊び、図工の材料集めなど、子供たちは日常的に西公園を訪れている。その中でも特に重要な体験となっているのは、1年生が入学してすぐに行う6年生との縦割り活動だ。6年生に手を引かれて西公園を訪れ、一緒に遊ぶ。この体験は、新入生にとって学校生活の温かい思い出となり、西公園への親しみを育む最初の一歩となる。また、行事でも西公園との関わりは深い。キャンドルライトファンタジーへの参加、過去には西公園の記念イベントで遊歩道の脇に球根を植えた活動もあった。クラブ活動では自然散策クラブが公園を訪れ、四季折々の自然観察を行っている。


      本物に触れる学び―。レンジャーとの特別な時間。

      では、教室での学習と実際に西公園で行う学習とでは子供たちの反応はどう違うのだろうか。

      川村氏:「やはり本物の自然に触れるという点においては全然違いますよね。子供たちの中で単なる知識になるのではなく、本当に原体験となる学びになっていると感じます。」

      川村氏の言葉からは、体験学習への強い信念が感じられる。川村氏が特に印象だと語ったのは2025年度のエピソードだ。例年、1・2年生は春と秋の2回、青葉山でレンジャーに案内してもらいながら自然体験を行っている。しかし、2025年度の秋はクマの出没により青葉山への立ち入りが制限された。そこでレンジャーに西公園へ来てもらい、西公園で自然学習を実施することになった。いつも遊んでいる西公園だが、専門家の案内で見ると全く異なる世界が広がる。植物の種が飛んでいく仕組み、葉っぱの匂い、木々の生態―。レンジャーが直接教えてくれる自然の不思議に、子供たちは目を輝かせた。

      川村氏:「子供たちは本当に楽しかったと言って帰ってきましたね。」

      続けて川村氏は、教員視点から見た西公園の意義についてもこう語る。

      川村氏:「教育においては、社会体験や自然体験などの様々な体験が必要です。しかし、学校がこうした街中にあるとどうしても自然体験が一番難しいのではないかと思われがちですが、西公園があることで少し歩けばすぐに本物の自然に触れることが可能になっています。」


      「未来の西公園を描いてみよう!」親子で西公園へ。

      2025年、西公園は開園150周年を迎えた。この記念すべき年に立町小学校は、『未来の西公園を描いてみよう!』というプロジェクトに参加した。このプロジェクトの発案には川村氏の深い想いが込められていた。立町学校として西公園開園150周年イベント<みんなでつくる!西公園開園150周年記念フェス>に協力したいという想いはあったものの、イベント当日が立町小学校が休業日であることもあり、学校全体での参加は難しい。しかし、子供たちにとって西公園は関わりの深い場所。何とか協力できる形はないだろうか—。そこで考えたのが夏休みの任意参加型プロジェクトだった。子供たちが自由に未来の西公園を想像して絵を描き、それを<みんなでつくる!西公園開園150周年記念フェス>で展示し、表彰も行う。このアイデアには川村氏のいくつかの想いが込められていた。

      川村氏:「今後この地域に残る子供たちも出てくると思うので、その子たちが大人になっても西公園を大切にしてくれたらいいなと思っています。その中で、未来の西公園を想像するということは子供にとって楽しく、かつ自発的に参加できることだと考えて提案いたしました。」

      そしてもう一つ、重要な想いがあった。それは親子で西公園を訪れるきっかけを作りたいという想いだ。

      川村氏:「今回のイベントを機に、子供たちにより西公園を好きになってもらったり、活用してもらったりするためには、親子で足を運んでもらう機会を作るのがいいのかなと思ったんですね。」

      コンクールとして表彰し、描いた絵をイベントで展示すれば、親御さんは子供と一緒に西公園を訪れるであろう。その機会に、親子で西公園の新たな魅力に気づき、もっと身近な場所として感じてほしい。そんな想いから生まれたプロジェクトだった。

      イベント当日の表彰式で、青葉区長や伊達武将隊の伊達政宗公から直接表彰状を受け取った子供たちの顔は喜びで輝いていた。親御さんたちも誇らしげな表情で子供たちを見守っていた。そして何といっても子供たちが描いた絵は、どれも自由で夢にあふれていた。

      川村氏:「お菓子の国をモチーフにした絵や、空を飛んでいる様子を描いた絵など、本当に夢の溢れる絵でした!」

      それは現実的な公園のデザイン案とは全く違うものだったが、だからこそ価値があった。子供たちの自由な発想、制約のない想像力。それこそが、未来を考える上で最も大切なものかもしれない。

      川村氏:「イベント自体が非常に思い出になったので、西公園という存在が子供たちの記憶に刻まれたことは確かだと思います。」


      多様な団体が関わる、特別な公園。

      川村氏は立町小学校に着任してから、プレーパークの報告会や西公園の150周年イベントに関わる中で感じたことがあるという。

      川村氏:「こんなにも多くの団体の方が関わっている公園は中々ないと思いました。多様な関わりの中で子供たちが色々な活動をできるというのは、西公園を活用するにあたって非常に恵まれていると感じます。」

      プレーパークの会、児童館、そして今回の西公園ブランディングプロジェクトに参加する若者たち等の多様な人々が西公園に関わり、それぞれの視点から公園の価値を高めようとしている。そして子供たちも西公園に関わる活動の中で、様々な大人たちと出会い、多様な学びを得ている。例えば櫻岡大神宮との関わり。5年生は職業体験で毎年櫻岡大神宮を訪れ、神社の仕事について学ぶという。さらに、さくら祭りではぬり絵を展示してもらい、豆まきには親子で参加する。そうした地域との多層的なつながりが、子供たちの学びを豊かにしているのだ。


      未来への想い―。自然と安全のバランス。

      これからの立町小学校と西公園の関わりについて川村氏は、教育者としての想いを語る。

      川村氏:「西公園は今も十分に貴重な場所なので、今後も立町小学校にとってもそうあってほしいなと思っています。」

      もちろん、時代の流れとともに改善されるべき点は改善されていくだろう。しかし、立町小学校の子供たちにとって西公園で自然体験ができることの価値は計り知れない。

      川村氏:「立町小学校の子供たちにとってやはり自然体験ができることが大きいので、その点ではあまり手を入れすぎない部分も残ってくれたらなと思っています。」

      一方で、子供たちがより安全に西公園を活用できるようになることへの期待もある。

      川村氏:「公園を子供たちに安心して活用してもらうためには、人の目というものがすごく大切です。皆さんが関わってくださることで、よりたくさんの人が訪れ、目が行き届けば、より子供たちが安全にもっと身近に使える場所になるのではないかと考えています。」

      自然を残してほしいという想いと、多くの人が利用することで安全性が高まるという期待。一見相反するようにも思えるこの二つの想いは、実は同じ根から生まれている。それは、”子供たちに豊かな体験をさせたい”という教育者としての純粋な願いなのだ。


      歴史が紡ぐ未来へ。

      昭和の時代には西公園の地に立っていた立町小学校の校舎。その痕跡は、松の根っことケヤキの鉢として、今も学校に残されている。そして現在、子供たちが日常的に西公園を訪れ、自然と触れ合い、季節を感じ、遊び、学んでいるように立町小学校と西公園の関係性は過去から今に受け継がれている。そして、<みんなでつくる!西公園開園150周年記念フェス>で未来の西公園を描いた子供たちの絵は、夢と希望に満ちていた。お菓子の国、空を飛ぶ様子、想像力の翼は自由に羽ばたく。その自由な発想こそが、これからの未来を切り拓く力になる。

      西公園と立町小学校の150年の絆はこれからも続いていく。過去から受け継がれる歴史を大切にしながら時代とともに変化していく。その中で多様な人々が関わり、支え合いながら、子供たちの豊かな学びと成長を見守っていく。さらに松の根っこやケヤキの鉢はかつて西公園に立っていた時代を今に伝えている。そして子供たちはその歴史を受け継ぎながら、新しい未来を創造していく。西公園という場所が持つ過去と現在と未来をつなぐ力。それは、この場所に関わるすべての人々の想いが紡ぎ出すものなのだろう。


      Text:Tomoka Matsuoka
      Photo:Yuki Suzuki

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