現代に生きる伊達政宗公が見た西公園と400年の時をこえて語られるまちの未来。

      • Interview

      2026/5/27

      仙台の街に存在する観光名所や祭りの会場で戦国の世を駆け抜けた武将たちの姿を見かけることがある。彼らは『奥州・仙台おもてなし集団伊達武将隊』(以下、伊達武将隊)だ。2010年に結成され、活動15周年を迎えた今、仙台・宮城の魅力を国内外へ発信し続けている。昨年2025年には大阪・関西万博にも出演し、活躍の場をさらに広げた。彼らは地元市民にとっては馴染み深く、観光客にとっては仙台の象徴ともいえる存在だ。

      そんな伊達武将隊は開園150周年を迎えた西公園をどう見ているのだろうか。今回は伊達武将隊の中心人物でもある“伊達政宗公”(以下、政宗公)へ自身の活動内容や西公園について、さらに併せて『西公園ブランディングプロジェクト』についても話を伺った――。

      写真:奥州・仙台おもてなし集団伊達武将隊 伊達政宗公


      現代に呼び覚まされた武将たち。伊達武将隊とは何者か。

      戦国の世を生き抜いた武将たちが、なぜ現代の仙台に蘇り、人々をおもてなししているのか。まずは政宗公に活動の根底にある想いから伺った。

      政宗公:「わし伊達政宗をはじめ、戦国の時代より生き抜いて仙台の礎を築いた武将たちが現代に呼び覚まされて、仙台城跡や仙台・宮城に訪れるお客人をおもてなしすることで、仙台・宮城を好きになってもらおうというものじゃ。あくまで、わしらは当時の伊達政宗本人であり、家来たち本人ということじゃな。」

      歴史上の武将たちが現代に蘇り、仙台・宮城の魅力を日本全国、そして世界へと伝えるために活動している伊達武将隊。国内だけではなく、メキシコ、タイ、台湾、アメリカ、中国など、遠征先は多岐にわたる。

      政宗公:「わしらは東日本大震災の8ヶ月前に結成したから、どうしても震災とは切っても切り離せない。震災以降は観光での復興の後押しを目指すことが一番大きな目的になっておった。だから、日本全国や世界に出て行って仙台のことを周知して、もっと仙台に来てもらうような観光の誘致も行っておる。」

      伊達武将隊の拠点である仙台城跡では、休日や観光シーズンに『演武(えんぶ)』で出陣し、刀を振るう殺陣や名乗りを上げて武将の生き様を語る口上、扇子を使った舞などを披露する。また、客人と一緒に踊る『仙台・宮城ございん音頭』や仙台の見どころの紹介によって、仙台観光の魅力を伝えている。演武は単なるパフォーマンスではなく、仙台の歴史と魅力を“体験として伝える場”であり、客人にとって仙台の第一印象を形づくる重要な瞬間である。

      伊達武将隊と交流ができるのは仙台城址だけではない。宮城交通と連携したバスツアーでは武将隊一人ひとりが行き先を決めるという企画も存在する。政宗公は、午年に合わせて竹駒神社へ初詣に行き、角田のスペースタワーを巡り、丸森でこたつ舟に乗り鍋を囲んだという。『今生きている自分たちが興味のある場所』や『客人を連れて行きたい場所』を案内するスタイルは、伊達武将隊ならではの魅力だ。

      また、片倉小十郎や松尾芭蕉による野鳥観察ツアー、支倉常長の歴史講座等、メンバーそれぞれの個性を生かした自主企画も多い。


      市民の憩いの場は、400年前の守りの要だった。

      <みんなでつくる!西公園開園150周年記念フェス> では、演武の披露だけでなく、『伊達武将隊とめぐろう!西公園魅力発見大スタンプラリー』という企画も行われ、チェックポイントで参加者をもてなした。そのように関わることも多い西公園について政宗公は次のように語る。

      政宗公:「わしも散歩で歩くことがあるんじゃが、一番は市民の憩いの場であろうな。特に立町周辺の子供たちにとってはもう生活の中の一部であろうし。」

      政宗公は現代の西公園に対して、『遊び場』『花見といえば西公園』というイメージを強く持っている。また、蜂蜜づくりや花壇づくりなど、『市民の手によってつくられている公園』という印象だ。

      政宗公:「西公園で市民が今なんとかしたい、持続させつつもっと活発にしていきたいという意志を強く感じておる。」

      しかし、政宗公の視点は現代だけにとどまらない。

      政宗公:「400年前のわしから見るとまた違うんじゃ。あそこは中級家臣、上級家臣の屋敷があった場所。そして仙台城の守りの要である。最終防衛ラインとでも言おうか。」

      元々は亘理伊達家や片倉家の屋敷があった場所であると語り、現在の西公園のイメージとの違いを語る。西公園は単なる公園ではなく、現代の市民の憩いの場であり、400年前の防衛拠点でもある。政宗公が語る西公園の姿は、現代の風景と歴史が重なり合っているのだ。


      未体験の世界を作れる場所である西公園の可能性を伊達政宗公が語る。

      『西公園ブランディングプロジェクト』において若者たちが昨年度に決めたブランドテーマ、『若者が五感で楽しめる秘密基地』について、政宗公は興味深い視点を示した。政宗公が最初に思い浮かべたのは、過去に西公園で実施された木上アスレチックの常設化である。

      政宗公:「秘密基地か―。木の上を歩くアスレチックがあったな。ああいうアクティビティは面白いと思っておる。」

      そこで政宗公が強く推したのが、『武家屋敷』である。未体験の世界である武家屋敷を外観にしつつ、中はトリックアートや迷路、茶道体験や忍者屋敷など柔軟な発想を示し、日本文化の提供場所を生み出せるのではという可能性も語ってくれた。そして政宗公は、西公園に『劇場』をつくるという大胆な提案も行った。

      政宗公:「そこがエンターテインメントの発信の場になって若者も集まってくる。であればわしらも定期公演を行いたい。」

      さらに西公園の先にある仙台城跡は地元民と触れ合う機会があまり多くないという現状を踏まえ、西公園が“市民と武将隊が交わる場所”になる可能性を強調した。

      政宗公:「観光とはまた別に市民や県民に対してのおもてなしの場所・基盤として西公園が発展してくれたらとても嬉しいな。」 

      そして政宗公は、『西公園ブランディングプロジェクト』をはじめとする多くの若者が西公園やまちづくりについて本気で考えていることへ、強い期待を寄せている。

      政宗公:「実際にその若者たちと会ってみて、今携わってるみんなが西公園をどうしていきたいのか。その周りにいる他の団体、わしらみたいなのがその西公園をどう考えているか。そこをやっぱりお互いにぶつけ合って生まれてくるものがあると思う。ぜひみんなの話を聞きたいし、純粋な若者たちが今のまちをどうしようかと本気で考えていることは嬉しいこと。若者がそういう意識を持ってくれなければ、そうしようと思う環境を大人が作っていかなければいけないし。だからわしに手伝えるところは手伝いたいし、一緒になって作り上げていきたいなという想いがある。」

      若者の柔軟な発想と地域で活動する大人たちの経験が交わることで、市民の生活に根ざした歴史ある公園に新しい価値を生み出す可能性がある。


      おもてなしの輪で広がる、仙台と伊達武将隊の未来。

      政宗公は、伊達武将隊の将来像について明確なビジョンを持っている。

      政宗公:「観光の客人をおもてなしして仙台・宮城を好きになってもらうという活動は、未来永劫続けていきたいと思っておる。その活動の幅を広げるにあたって、もっと拡大できればなという想いがある。」

      また、政宗公は市民が伊達武将隊のことを気軽に呼べる存在になりたいとも考えている。なぜなら、伊達武将隊をどうやって呼んだら良いか分からず、「呼んでいいんですか?」と聞かれることもあるからだ。市民が武将隊に参画する身近な存在となることで、武将隊のおもてなしが市民発信のおもてなしにもつながる。また、政宗公は子どもたちが“おもてなしの心”を学ぶ場としての伊達武将隊の役割も重視している。小学校への出張授業では、地域の歴史をクイズ形式で伝え、子どもたちが地元を好きになるきっかけをつくっている。

      政宗公:「観光の客人にとってはわしらは入り口であって、見た時のインパクトの強さも一つ思い出になる。たまに思い出してもらって仙台に行こうと興味を引くことがわしの目的。もう一つ大切なポイントとしてあるのは、仙台の中で活動するうえで仙台市民に自分たちの住んでいる地域にもっと興味を持ってもらいたい。」

      続けて政宗公は、仙台というまちに対する想いも語る。

      政宗公:「仙台市全体でいろんな人を迎え入れる。伊達政宗の元々の基盤となっているおもてなし。それは400年前からしておったわけであるが、真心を込めて人に接するという信念があって、それが今のおもてなしの我らの活動になっておる。当時仙台を作った時の政宗の気持ちが、きっと今の現代人にとっても学びになると思うんじゃ。我らと一緒に活動することでそういった子供たちの学びや心を育めるというところにも繋げていければなと思っておる。おもてなしの輪がどんどん広がっていくような感じじゃな。」


      「面白いと思ったことを一度やってみる。」政宗公から若者たちへ 。

      最後に、政宗公は学生や読者に向けて力強いメッセージを残した。

      政宗公:「400年前から、わし伊達政宗がやってきたことは、とにかく何でも挑戦をすることじゃ。歴史・伝統はもちろん大事だが、時にはそれに囚われずに思い切り新しいことをやってみる。それが何かのきっかけになる。まずは、自分が本当に面白いと思うこと、ちょっとあり得ない、飛躍しすぎかなと思っても、自分が面白いと思ったことを一度やってみる。それで地域を面白くしていってもらえたら嬉しい限りじゃな。今すぐに結果は出ん。1年2年ではなくて、10年、あるいは50年先が、今やっている者たちの挑戦で変わっていくだろうから。そこに期待しておる。」

      インタビュー前に外へ出て行った写真撮影でも、すれ違う人への挨拶やその場にいる観光客との交流を欠かさず、笑顔で向き合っていた伊達政宗公。県内外に関わらず、「直接会って・喋ってのおもてなし」は欠かさない。そして今と昔をつなぐ存在であり、人々との直接的な関わりを大事にする伊達政宗公には、おもてなしの精神が宿る仙台で、地域と若者が意見を出し合いながら成長するまちの姿が見えている。仙台と西公園の発展、さらに伊達武将隊によるおもてなしはこれからの未来でも続いていく――。


      ≫奥州・仙台おもてなし集団伊達武将隊

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      Text:Reika Muraoka
      Photo:Yuki Suzuki

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