偶然の一歩ですら未来を変える。立場の違う2人による対談から見えたプロジェクトの価値 

      • Interview

      2026/2/19

      行政、大学機関、企業が産学官連携を組んで取り組む『西公園ブランディングプロジェクト』。今回は、本プロジェクト主担当である青葉区中央市民センターで係長を務める髙橋航哉氏(以下、髙橋氏)と、本プロジェクトの参加者である東北学院大学1年の松根颯汰氏(以下、松根氏)の二人に、それぞれの立場から本プロジェクトに対する想いをお互いに語ってもらった。では二人はどのような想いを抱いて活動に携わっているのか。プロジェクトへの参加経緯や継続する理由、それぞれの活動に対する悩みや展望を、二人の対話の様子とともにお届けする。

      写真:左側から髙橋航哉氏 松根颯汰氏


      髙橋氏と松根氏それぞれの現在

      髙橋氏は、民間企業での営業・商品開発・店舗開発など多様なキャリアを経て、令和元年に仙台市職員となった。現在は青葉区中央市民センターに所属し、ブランディングプロジェクトでは影の立役者としてフォローを担っている。髙橋氏は、本プロジェクトにおける3C分析やSWOT分析等の手法を用いたワークショップ、物事の考え方や実践方法について、「ブランディングで学ぶことは、社会に出ればどんな仕事でも必ず直面すること」と話すように、これまでの多彩な経験を背景に、ブランディングの重要性を感じている。

      一方で東北学院大学情報学部1年生である松根氏は、数学の教職課程を履修しながら、週に一度地元の中学校で学生アドバイザーとして活動している。障害のある生徒の授業に寄り添い、数学以外の科目でも日常会話を交えながら学びをサポートする日々だ。大学では高齢者向けスマートフォン講座や小学生向けパソコン教室にも参加し、教材のスライド作成を行うなど積極的に活動の幅を広げている。また、高校時代から自己分析を繰り返してきた経験もあり、今までの人生の中で自分はどういう人間なのかを考えることが好きだったそうだ。


      行政の熱意が学生のなんとなくを”本気”に変える

      その松根氏が本プロジェクトに参加したきっかけは、前日の深夜に届いた先輩からの連絡だった。「『西公園ブランディングプロジェクト』に一緒に参加しない?」という誘いに、「予定もないし、行ってみるか。」という軽い気持ちで参加した第一回目の本プロジェクト定例会でブランディングの概念に触れたことが転機となった。

      松根氏:「最初はブランドやブランディングという言葉を聞いても、バッグのブランドという抽象的なイメージしかありませんでした。でも、ブランディングについて話を聞いてみたら、ブランドやブランディングという言葉にこういう意味があったんだという気づきがありました。とにかく最初のブランディングセミナーが面白く、月に一度の午前中というスケジュールも参加しやすいと感じました。学んだことをグループワークですぐに実践できる形式も好きでしたね!」

      実は当初は、年齢が近い参加者が少ない状況だったため「2年間も活動を続けられるかな。」と少し不安もあったという松根氏。しかし、ブランディングセミナーの面白さに加え、身近な西公園が少しずつ変わっていく様子を目の当たりにできるかもしれないことが継続の大きな理由になった。

      一方で髙橋氏は、今回の西公園ブランディングプロジェクトについて、昨年度までの若者事業の活動と比較しながら語る。そこには、今はまだブランディングのすべてを理解していなくとも、就職活動や社会人生活の中でいつか振り返ってほしいという学生の未来を真剣に想う髙橋氏の熱い情熱があった。

      髙橋氏:「以前は楽しかったで終わってしまう側面があり、それが将来学生の皆さんの役に立つ経験にきちんとなっているのか、疑問を感じる部分がどうしてもありました。そこで、企業や行政、教育機関のプロと連携し、学生が社会に出たときに学びをフラッシュバックするような経験をつくりたいと考えたのです。いつか仕事で行き詰まったとき、ここで学んだブランディングをふと思い出してくれる。それがこの講座を開催する最大の意義だと思っています。」


      経験が積み重なる場が西公園ブランディングプロジェクトにはある!

      松根氏:「毎回の定例会では必ず気づきがあります。内容のすべてを完璧に覚えられなくても何かしら印象に残る。小さな思い出が一つずつ積み重なっていく感覚です。」

      髙橋氏:「それはいいですね!第一線で活躍されているプロの知識を少しずつ積み重ねてくれているという実感が得られるのは、主催側として非常に嬉しいことです。」

      他にも、西公園ブランディングプロジェクトでは他大学の学生との交流も大きな刺激になっているという。

      松根氏:「定例会は学生同士のコミュニケーションから始まるのが楽しいです(笑)。毎回初めましての人と話すのは新鮮ですし、自分の周りに知人がいない環境だからこそ、いつもと違う自分として参加できる良さもあります。」

      髙橋氏:「大学が違うからこそ、かえってフラットに話しやすい面もあるのかもしれませんね!」

      その他、今回のプロジェクトの活動の一環で運営しているオウンドメディア『TIME MACHINE NISHI PARK』での、学生が中心となっておこなっている記事投稿も松根氏にとって特に大きな財産となった。

      松根氏:「企業の方にサポートを受けながら記事の企画書を作り、実際に1時間ほどインタビューをして、記事として形にする。その一連の流れを経験できたことが一番印象に残っています。添削や作成の過程で、当初は意図していなかった知識も常に学べるからこそ、定例会にも行ってみようという前向きな気持ちになれるんです。」

      髙橋氏:「そう言ってもらえるとすごく嬉しいですね(笑)とてもありがたいです。」

      松根氏:「ブランディングを学ぶという経験や記事を制作するという経験は、自分でやりたいと思っても個人ではなかなかできないことです。これで合っているか不安になっても、プロの方々にすぐに相談できる環境があるのは、この活動の大きな強みだと思います!」

      松根氏が作成した記事はこちら
      SLに込められた想い一。小学生の手紙から始まった歴史の伝承

      これからの未来へ向かって。西公園開園150周年記念フェスに込められた想い


      地域参加を広げるために二人が語り合ったこととは―

      インタビュアーからの「地域活動への学生参加を増やすには?」という問いに対し、二人は「学生はなかなか市民センターに来ないよね(笑)。」と冗談半分で笑い合いながらも、真剣に改善策を語り合った。松根氏は自身が関わる他の活動でも同様の課題を感じて試行錯誤を続けていた。

      松根氏:「そもそも地域活動を知ってもらうことの難しさや、始まりのゼロからイチにする大変さを痛感しています。」

      髙橋氏:「我々も全く同じ悩みを抱えています。ヒントがあるとすれば、まずは参加するメリットを提示して最初の一歩を踏み出してもらう仕掛け作りだと思います。ボランティア証明書でも単位でもいい。まずは来てもらい、そこで初めて人の役に立てるという手応えを感じてもらうことが重要だと思います。」

      自分ごととして体験して初めてわかる価値がある。しかし、きっかけだけでは継続には繋がらない。活動の目的や本質を丁寧に伝えることが必要不可欠であるという点でも二人の意見は一致した。

      松根氏:「正直、最初は西公園で何かをやるということくらいしか分かりませんでした。でも参加したからこそ感じることがあります。だからこそ、ここに行けば何かが得られるということがもっと多くの学生に伝わってほしいです!」

      髙橋氏:「松根さんありがとうございます!参加までのハードルをどう下げるかを考えた上で、参加した結果として良かったと言ってもらえたらとても嬉しいことです。そのためには、やはり趣旨や目的をもっと伝えて入り口をつくっていかないといけないと私も思います。」


      「夢物語で終わらせたくない」未来へつながる経験としてのブランディング

      実はブランディングの思考は二人の日常にも浸透し始めている。松根氏はアルバイト先でも「どうすればもっとお客さんが来てくれるか」という相手の立場になって物事を考え、小さな目標を立てることを意識するようになったという。それに対して髙橋氏は松根氏の成長をさらに応援するように背中を押す。

      髙橋氏:「物事一度で正解はなかなか出ません。何度もトライアンドエラーを繰り返し、自分の強みや弱みを考えながら進んでいけばいいと私は思います。失敗しても、それを次の経験に生かせれば、無駄なことは一つもありませんよ!(笑)」

      さらに髙橋氏は、続けて来年度も続く西公園ブランディングプロジェクトに対する譲れない願いも語り始めた。

      髙橋氏:「西公園ブランディングプロジェクトを単なる夢物語で終わらせたくありません!行政の担当者などの意見も踏まえ、現実の課題を乗り越えた上で、皆さんの提案が活用される形に近づけたい。そして学生の皆さんが泥臭く考え抜いた結果を提案する。そこまでのプロセスを経験させてあげたいんです!」

      髙橋氏の言葉を聞いた松根氏はその真剣さに心を打たれ、しっかりと想いに応えたいと意気込む。

      松根氏:「運営の方々が本当に自分たちのことを考えてくれていると感じます。今の髙橋さんとのお話もそうですが、大人の方々とこれほど深く話す機会は貴重でとても楽しいです。だからこそこれからも頑張っていきたいです。」

      髙橋氏:「本当に松根さんのような学生が一人でもいてくれるだけで私はやってよかったと思えます!一人でも多くの学生に最後まで走り抜けてほしい!これからもぜひよろしくお願いします!」

      松根氏が踏み出した偶然の一歩すら未来を変えてしまうパワーが西公園ブランディングプロジェクトには存在する。ここは地域の未来を創る場であると同時に、学生が自分自身の未来を形づくる場でもある。ここで生まれた小さな気づきが、いつか誰かを支える大きな力になる。地域と参加者の将来を見据えたこの挑戦は、これからも続いていく。


      Text:Reika Muraoka
      Photo:Yuki Suzuki



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