〈PROJECT REPORT#2〉若者たちの本音が、西公園の可能性を切り拓く―。 

      • Project

      2025/9/17

      2025年5月24日、青葉区中央市民センターの会議室に熱気が満ちる。そこに集ったのは、仙台市の未来を担う若者たちだ。約1ヵ月前に始動した前例なき産学官連携による『青葉区若者社会参画型学習推進事業(以下、青葉区若者事業)』。この事業は、青葉区中央市民センター、株式会社BLUE SODA、さらには東北福祉大学を中心とした仙台市内の大学機関が歴史的タッグを組み、開園150周年を迎える西公園ブランディングという壮大なプロジェクトに、若者たちと挑む。

      第2回定例会では、実際に仙台市公園管理課(以下、公園管理課)の職員から西公園についての情報提供を受けた後、若者たちは5つのグループに分かれ、各自が思っている西公園のイメージについて語り合った。そこで語られたのは、西公園へのあまりにも率直な意見の数々。そのリアルな声の先に見えた、西公園の新たな可能性とは—。

      2027年の仙台市長・青葉区長への直接提言という前代未聞のゴールに向けた歴史的プロジェクト。第2回定例会の全貌をレポートする。


      公園の”中の人”が語る。西公園150周年、知られざる歴史と未来

      西公園に関する本格的な情報提供は、公園管理課職員である福與聡氏(以下、福與氏)によって行われた。その冒頭、いきなり驚きの事実が明かされる。仙台市内に1,855もある公園の中で、最も古い公園がなんと西公園だという。西公園は明治8年(1875年)に『桜ケ岡公園』として開園し、今年で記念すべき開園150周年を迎えるのだ―。続いて語られたのは、西公園の歴史。昭和中期、実はこの公園には現在からは想像もつかないほど多彩な施設が存在していたという。それは市民図書館、仙台市天文台、市民プール、軟式野球場。かつての西公園は、まさに仙台市民にとって文化やスポーツの総合的な拠点であった。しかし、2000年代に入ると状況は一変する。2001年に市民図書館が閉館、2006年に市民プールが閉鎖、2007年には仙台市天文台が閉台と、相次いで主要施設が失われていった。最後には、現在進行中の西公園再整備事業といった政策についても説明がされ、公園管理課から若者たちに次のような言葉が送られた。

      福與氏:「ぜひ若者の声を聞かせてほしい」

      150年の歴史の重みと現在の姿、そして未来への展望。さらに若者がもつ新たな視点への期待─。仙台市公園管理課からの情報提供は、今後のブランディングを進める上で重要なヒントとなったのと同時に、行政側の真摯な姿勢と若者たちへの深い期待が、会場全体に広がった瞬間でもあった。

      仙台市公園管理課:福與 聡氏


      若者が語る、西公園の“今”。これからに繋がるリアルな声とは—

      公園管理課からの情報提供を終え、若者たちは5つのグループに分かれて徹底的なイメージ出しを行い、最終的に発表を行った。そこで挙がった意見は、大人たちの想像を超える、率直でリアルな“本音”の数々だった。

      若者の声から浮かび上がった、西公園の『課題』と『魅力』、そして未来へ向けた『提案アイデア』。この3つの視点にフォーカスし、彼らが語った”本音”を紐解いていこう。

      >>課題:意外な“壁”の存在
      まず若者たちの本音から見えてきたのは、150年の歴史を持つ西公園が抱える、『アクセスの壁』と『情報の壁』だ。

      『(中心部から少し離れているため)西公園までは、歩いて行こうとは思えない/バスでの行き方がわかりにくい/アーケードから離れている/仙台駅から少し遠い/イベントがある時しかわざわざ行かない』

      これらの声は、普段から公共交通機関や商業施設を拠点に行動する若者にとって、西公園の動線が明確ではないことを物語っている。また、園内でも情報の壁は立ちはだかる。

      『榴ヶ岡公園と混ざる/どこまでが西公園か分からない/地図が見当たらない/広すぎて、何がどこにあるのか分からない』

      誰でも簡単に情報にアクセスできる時代だからこそ、逆に物理的な案内や情報が不足しているという課題が浮かび上がった。

      >>魅力:知られざる多面的なポテンシャル
      率直な意見を掘り下げると、西公園が持つ知られざる多面的な魅力も浮かび上がってきた。それは、単なる緑地ではなく、多様な価値と潜在的なポテンシャルに満ちた場所であるというイメージだ。

      『心が落ち着く/静かで心が浄化される/空気がきれい/穏やかな雰囲気』

      若者たちは喧騒から離れてリラックスできる、いわば“心のオアシス”としての価値を見出していた。さらに、次のようなアクティビティや周辺施設との連携や国際性といった、新たな視点での魅力が浮かび上がった。

      『広くて安全にボール遊びができる/美術館が近い/仙台城が見える/地下鉄が近い/外国人がたくさん来ている/実は、図書館、天文台、プール、野球場など以前はまとまってあった』

      >>提案アイデア:未来を切り拓くヒント
      学生たちは西公園の未来を切り拓くための具体的なアイデアも次々と提示してくれた。それは、公園が人々の日常に溶け込み、新しい賑わいを生み出すためのヒントだ。

      『公園内にカフェがあると嬉しい/図書館 Book Café があると良さそう/キッチンカーやパン屋があるといい/BBQセット貸出/ピクニックエリアをつくる』

      このような意見は、公園を単なる休憩スペースではなく、食事やレジャーを楽しむ“賑わいの場”へと変える可能性を示唆している。また、次のような提案からは、地域文化や自然を活かした独自性のあるイベントや空間づくりへの期待が感じられた。

      『鯉のぼりがあると楽しそう/風を活かした何か/日本酒イベント開催/産直 お土産買える店をつくる/場所ごとにイメージや雰囲気を分ける』

      学生たちが語った『課題』『魅力』『提案アイデア』は、単なる意見の羅列ではない。150年の歴史を持つ西公園を、彼らが一歩踏み込んだ視点から捉え、真剣に向き合った結果だ。この貴重な意見の数々は、今後西公園をブランディングしていく上での重要な財産となるだろう。


      若者の本音が行政の心を掻き立てる―。

      グループワークを通じて若者たちが発信した、西公園への率直なイメージの数々。その一つひとつに、公園管理課から心のこもったフィードバックが返ってきた。

      福與氏:「若者が西公園のことを考えてくれて大変嬉しい。このプロジェクトがこれからますます楽しみになりました」

      福與氏の言葉からは、行政職員としての枠を超えた、偽りのない喜びが溢れていた。長年、西公園の管理運営に携わってきた職員たちにとっても、若者たちの新鮮な視点は新たな可能性の扉を開いたに違いない。


      本音から生まれた『新たな視点』と『確信』

      ワークショップ後のアンケートには、若者から第2回定例会について率直な感想が寄せられた。特に印象的だったのは、西公園の歴史的価値への新たな理解だ。「仙台市内で最も古く、1855年もある公園の中で一番歴史がある公園だと初めて知りました」という驚きの声があがった。仙台市民として育った若者でさえ、「深い歴史があったことを初めて知った」と感想を寄せるほどだ。地元仙台の学生でさえ知らなかった西公園の歴史は、参加者にとって新鮮な発見だった。また、このプロジェクトは、若者が公園管理の本質を理解するきっかけにもなった。学生からは、「公園管理課の方が『何かを設置したい、ではなく、今ある公園を活かしたい』と述べていたことが印象的です」という感想が寄せられ、単なる利用者視点を超え、公園を活性化するための本質を捉え始めていることがうかがえる。さらに、若者が新たな視点を発見していたことも、次の感想から確認できる。「自分は仙台市民なので、これまでの経験や知識をもとに西公園について書きましたが、他のグループメンバーは県外出身で、『そもそも西公園ってどこ?何があるの?』というところからスタートしていたのが印象的でした」。そして、この歴史的なプロジェクトへの期待は、参加者の中で確信へと変化しつつあり、実際に「大学・企業・行政が三位一体となって取り組むプロジェクトは非常に貴重であり、自分にとっても大変有意義な経験になると確信しています」という声もあがっていた。


      若者たちの本音が、西公園の可能性を切り拓く―。

      若者たちの率直な評価によって、現在の西公園が抱える課題も浮き彫りになった。しかし、この現状認識こそが、西公園ブランディングの出発点となる。これは、第1回定例会で学んだ「ブランドはユーザーの頭の中に存在する」という相澤氏の教えを体現するものだった。リアルユーザーとしての視点から、これから目指すべき西公園像を描き始めたのだ。

      その発想は、行政や専門家だけでは決して思いつかない、若者ならではのクリエイティブなものに満ちていた。率直な現状分析、魅力の発見、そして創造的な提案の数々は、これからの西公園の可能性を切り拓いていくに違いない。

      産学官連携による2年間の西公園ブランディングプロジェクトはまだ始まったばかりだ。しかし、第2回定例会で示された学生たちの熱量と、それを温かく受け止めた行政の姿勢は、必ずや西公園の未来を変える力となるだろう。150年の歴史を背負った西公園は、今後若者たちの手によってどのようにブランディングされていくのか。次なる舞台、第3回定例会に引き続き注目したい。


      〈PROJECT REPORT〉 Archive

      #1始動日に見た熱きパッションと若者たちの第一歩 


      Text:Yuki Suzuki
      Photo:kensuke Miura/ Yuki Suzuki

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