Project
2025/9/24
2025年6月21日午前10時、青葉区中央市民センター第2会議室に若者たちが集結した。彼らは今回、3C分析の1つである『競合分析』という本格的なマーケティング手法を駆使し、西公園の真の姿に迫る実践的な挑戦に挑む。
今回で第3回目を迎える、『青葉区若者社会参画型学習推進事業』の一環である西公園ブランディングプロジェクト。若者たちはどんな視点で競合分析を行い、西公園の未来を切り拓いていくのだろうか。プロのブランディング専門家の指導のもと、彼らが導き出した競合分析の結果をご覧あれ―。

冒頭、本事業担当者の青葉区中央市民センター職員、三浦健輔氏が登壇し、西公園プロジェクトの概要を説明。「皆さんと想いを持って取り組んでいきたい」という熱意も語った。続いて、株式会社BLUESODA代表取締役の相澤総一郎氏(以下、相澤氏)が、ブランディングのプロとして登場。若者たちが取り組む西公園ブランディングプロジェクトのロードマップをモニターに映し出し、2年間におよぶ本格的なプログラムをフェーズごとに解説した。第1フェーズは「基礎理解と現状分析」。4月の基礎セミナーから始まったプロジェクトは、5月の仙台市公園管理課による講話や西公園のイメージ出しを経て、この日から3C分析へと移行する。7月にはフィールドワークで公園利用者へのインタビューを実施し、8月も引き続き3C分析を行う予定だ。その後、SWOT分析やクロスSWOT分析、分析結果の統合と課題定義が控えている。さらに、この先にはブランドテーマの決定、ブランドコアの作成、戦略設計、コミュニケーションデザインといった本格的なブランディングプログラムも予定されている。そして2027年3月、最終発表会でその集大成を迎えるのだ。つまりこれは単なる学術的なプロジェクトではない。彼らが西公園のブランドを再定義し、未来に向けた価値を創造する、まさに実践的な挑戦なのだ。

キックオフの熱気が冷めやらぬ中、3C分析のワークショップへと移った。最初にプロジェクターに映し出されながら説明されたのは、マーケティングの基本フレームワーク『3C分析』の図。市場(Customer)、自社(Company)、競合(Competitor)。この3つのシンプルな視点が、若者たちの武器となる。この日の若者たちのミッションは、Competitor(競合)の分析だ。ただし、それは単なる分析ではない。大町西公園の『直接競合』と『間接競合』という2つの視点から、その真の姿を炙り出していくのだ。直接競合は、仙台市にある西公園と同じ規模の似た公園。そして間接競合は、公園以外で若者が休日に訪れる場所。一見、公園とは無関係に思えるカフェや映画館、商業施設までもが分析の対象となる。この多角的な視点こそが、まだ見ぬ西公園の強みや弱みを発見する鍵となるのだ。
今回のワークショップは、『直接競合』と『間接競合』の2部構成で行われた。それぞれ限られた時間で、密度の高い分析を行う。競合となる施設のアイデア出し、グループ内での意見共有と議論、発表準備、そして発表という流れである。

直接競合の分析では、仙台市内の公園が次々と挙げられた。七北田公園、台原森林公園、榴岡公園、勾当台公園、錦町公園など。それぞれの公園が持つ特徴を、若者たちは鋭く捉えていく。例えば、七北田公園を挙げたグループは、『いつでもある程度人がいる、西公園と似ている』と特徴を分析。強みとして挙げられたのは、『広大な敷地、地下鉄駅からの良好なアクセス、充実した駐車場、周辺施設の多さ、そして豊富な遊具』だった。一方で、『仙台駅からの距離、自然環境の物足りなさ、西公園より少ないイベント、広さに対してベンチが不足している』という点が弱みとして挙げられた。台原森林公園を分析したグループは、『地下鉄駅が2箇所から利用できるアクセスの良さ、科学館や文学館との近接性、定期的な観察会などのイベント、駅から見渡せる開放的な景観』を強みとして挙げた。しかし、『広大さが逆に利用者を戸惑わせる』という弱みにもなっているという意見が出された。
若者たちの視点から、普段見慣れた公園の『強み』と『弱み』が浮き彫りになっていく。この多角的な分析こそが、西公園の新たな価値を見出すための重要な第一歩となるのだ。
ワークショップは後半戦に突入し、焦点は『間接競合』へと移る。公園という選択肢を選ばないとき、人々はどこへ向かうのか。若者たちの視点は、公園という枠組みを超え、人々の行動パターンそのものへと向けられていった。
あるグループが挙げたのは、西公園からほど近い『仙台市美術館』だ。この施設の最大の強みは『そこにしかない唯一のものがある』という点だと分析した。さらに、『施設内のカフェや、ゆったりと過ごせる空間、天候に左右されない屋内、特に夏場の涼しさ、駐車場完備』も強みとして挙げられた。ただし、『地下鉄駅から遠いこと、子ども向けコンテンツが少ないこと、入館料という経済的ハードルが弱点』だとも指摘する。この美術館の事例は、西公園に重要な示唆を与えていた。若者はただその場所に行くだけではなく、その場所でしか得られない特別な体験を求めていることがあることも、この結果から分析できる。静寂の中でアートに触れたり、落ち着いたカフェで本を読んだり―。この提供価値を深く分析して西公園と比較することで、西公園が持つ潜在的な強みや弱みの発見に繋がるのだ。また、別のグループからは『ラウンドワン仙台苦竹店』が挙げられた。ボウリング、ダーツ、カラオケ、クレーンゲームといった『圧倒的なエンターテインメント性』が最大の強みだ。その他の強みとして、『最寄りの苦竹駅から近い、夜遅くまで営業している』が挙げられた。一方、『飲食店のバリエーションが少ない、利用にはお金がかかる』という意見も出た。公園とアミューズメント施設。一見すると全く異なる空間だが、余暇の過ごし方という点で明確に競合している。ラウンドワンが提供する『明確な遊び』や『エンターテインメント性』、そして『天候に左右されない環境的な良さ』は、今後の西公園の真の強みや弱みを見つけるための重要な鍵となるだろう。

ワークショップが終了し、相澤氏から第4回目に行うフィールドワークの説明が始まった。机上の分析から現場の実践へ。今回の競合分析で得られた視点をもとに、実際に西公園に足を運び、利用者一人ひとりに直接インタビューを行うのだ。公園に来る頻度やその目的を探ることで、3C分析の”顧客(Customer)”を深掘りしていく。そしてプロジェクトの歩みはまだまだ止まらない。さらにここで、本プロジェクトを通じて、希望する若者たちが西公園に関するオウンドメディアを運用していくことも発表された。それが、後の2025年9月1日にローンチされたオウンドメディア『TIME MACHINE NISHI PARK』だ。このオウンドメディアを通じて、プロジェクトの過程を伝えていくことはもちろん、西公園の真の姿や歴史、そこに関わる人々を発信もしていく。これは、若者が社会を自分ごととして捉えるという本事業の目標の一つにも繋がっているのだ。
午後12時、熱気に包まれた2時間のセッションが終わりを告げた。若者たちの目の前には、無数の付箋が貼られた模造紙。そこには、直接競合と間接競合の強みと弱みが詳細に記録されている。しかし、それ以上に価値があるのは、若者たちの頭の中に生まれた新しい視点と可能性だ。第3回定例会で集まった若者たちが挑んだのは本格的な競合分析だった。直接競合と間接競合という複眼的な視点は、西公園の可能性と課題を鮮やかに掘り出していく。さらに、今回のワークショップで特筆すべきは、若者たちの本気度からくる分析眼の鋭さだ。『広さが強みにも弱みにもなる』という視点、『周辺施設との連携も価値を生む』という発見、そして『明確な目的対自由度』という間接競合との比較。これらの洞察は、本気で考えるからこそ生まれた、若者ならではの視点である。
回を重ねるごとに熱量と視点が進化を遂げる若者たちの挑戦。2027年3月の最終発表会までまだ20回以上の定例会が残されているからこそ、これからも成長と進化は終わらない。彼らは一つひとつのステップを着実に踏みながら、西公園の新しい姿を描いていくのだ。着実に新たな視点を獲得してきている彼らが、今後どのような発見を重ねていくのか。次回の第4回プロジェクトレポートにも期待してほしい。
Text:Yuki Suzuki
Photo:kensuke Miura/ Yuki Suzuki
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