〈PROJECT REPORT#4〉若者が集めた、西公園利用者のリアルボイス

      • Project

      2025/10/08

      2025年4月に始動した前例のない青葉区若者社会参画型学習推進事業(以下、青葉区若者事業)』は、仙台市内で最も長い歴史を持つ西公園が、令和7年6月に開園150周年を迎えるという歴史的な節目に、行政、企業、大学機関が手を組んだ強力な連携体制のもと発足し、『西公園ブランディングプロジェクト』と名付けられた。このプロジェクトは約2年間で若者が西公園のブランディングに取り組み、最終的に仙台市長や青葉区長への成果発表を目指すという極めて実践的なアウトプットの場である。プロジェクトの根底には、『若者に社会を自分ごととして捉え、自発的に行動する人財になってほしい』という熱い想いがある。この理念のもと、20名を超える若者たちが活動を続けてきた―。

      その彼らがついに迎えたのが、プロジェクト始動から約3ヶ月後の2025年7月26日の第4回定例会である。トークネットホール仙台の第3会議室に集結した若者たちがこの日臨むのは、『西公園利用者へのインタビュー』である。これは、机上の学びを飛び越え、公園を訪れる人々の声に直接耳を傾ける初のフィールドワークへの挑戦を意味し、若者たちが歴史ある公園のリアルな現状へと踏み出す瞬間である。


      灼熱の太陽の下で聞いた、西公園利用者の本音

      フィールドワークに先立ち、若者たちの手元には、利用実態の把握からポジティブ・ネガティブ両面のインサイトを引き出すまで、綿密に設計されたインタビューシートが配られた。このシートは、単なる質問リストではなく、利用者との信頼関係を築き、深層心理を引き出すための緻密なツールとして機能する。その資料をもとに、株式会社BLUE SODA代表取締役である相澤総一郎氏から、インタビューの目的、質問の構造、現場での注意事項について、実践的な説明が行われ、理論面での準備は万端となった。そして迎えたインタビュ―。西公園は快晴。照りつける真夏の日差しが、若者たちの熱意を試すかのように待っていた。若者たちは会議室を出て、60分間のフィールドワークへと向かう。公園に飛び出した若者たちが、次々と公園利用者へ声をかけていく。見知らぬ人に話しかける際の最初の緊張感は、誰もが抱くものだ。しかし、彼らは立ち止まらなかった。熱意と勇気を持って、若者たちはインタビューへ挑戦し続けた。一歩踏み出すその姿勢こそが、机上の空論を避ける最大の原動力だ。その真摯な姿勢が人々の心を動かし、公園利用者の温かい協力も得られた結果、ウォーキング中のシニア層から子育て中のファミリー層まで、多様な人々から貴重な声を聞くことができた。この一つ一つの『生の声』こそが、ブランディング戦略を練る上での重要な土台の一つとなる。

      ≫西公園の多面的な利用実態を捉える。現場のリアルボイスPICK UP

      70代男性:週2〜3回のリハビリ散歩
      遊具広場近くのベンチにいた70代男性。立町から1人で訪れ、週に2、3回、リハビリのために散歩をしている。利用理由は、自宅からの近さ。青葉山公園も訪れるが、休日の混雑を避け西公園に来ているという。

      70代女性:1人で毎日の散歩
      1人でほぼ毎日西公園を訪れ、花々の撮影を楽しむ70代女性。「他の公園よりも静かで穏やか」だと感じている。

      30代母親と子ども2人:毎日のサッカー練習
      30代女性と子ども2人。自宅から近くほぼ毎日来園し、息子のサッカー練習場所として西公園を利用している。

      家族4人:多岐にわたる目的で西公園を利用
      「家から近いため、子どもと一緒に来やすい」という家族。普段の遊びに加え、イベント、花見、花火など多様な目的で利用している。一方で、遊具改善、プレイパーク設置、草むしりなど、整備面での具体的な要望も挙がった。

      ≫最大のハイライト:言葉の壁を越えた英語でのインタビュー

      この日のフィールドワークにおける最大のハイライトは、西公園の北側エリアで発生した。40代のアメリカ人男性と出会ったグループが、即座に英語でのインタビューに挑戦することを決意したのである。そのグループの若者らは、事前に準備した日本語の質問をその場で英訳し、一つひとつの質問に丁寧に向き合って見事に成功を収めた。この、予期せぬ場面での集中力と熱意は、西公園ブランディングプロジェクトに関わる大人も立ち止まって見守るほどだった。

      彼はシカゴ出身で、仕事で来日した。西公園も初めての来園であったが、その魅力として『景色の良さ』と『川・水辺の近さ』を挙げた。これは、国際的な視点からも西公園の自然景観が大きな価値を持つことを示す、貴重なインサイトとなった。言語の壁を越えた対話の成功は、若者たちの自信を深めると同時に、西公園の普遍的な魅力を再認識する決定的な瞬間となった。

      ≫見えてきた現実。利用者の少なさと若者の不在

      インタビューを通じ、公園の現状が見えた一方で、ある厳しい現実にも直面した。9時40分から10時40分までの1時間で、南北エリア合わせた利用者はわずか約30人に留まったのである。真夏の快晴の土曜日午前という条件を考えると、これは極めて少ない利用者数であり、若者たちにプロジェクトの緊急性を突きつけるものであった。そして、もう一つの重大な事実。それは、未来の西公園の担い手である同世代の若者の姿が、ほぼ皆無という現実だ。西公園は仙台市最古の公園でありながら、その歴史や魅力を知る機会、あるいは訪れる動機が、若い世代に不足していることが裏付けられた。


      若者たちが発表した西公園のリアル

      定刻の10時40分、フィールドワークを終えた全グループが会議室に戻り、得られた知見の発表に移る。若者の手元にあるインタビューシートには、60分間で採集した利用者の『生の声』と、若者自身の『気づき』が凝縮されていた。彼らの熱気が満ちた会議室で、休憩後相澤総一郎氏から、まとめ方と分析のポイントに関する助言を受け、各グループは10分間でインタビュー結果の要点整理に取り掛かった。その後、25分間の発表タイムが始まり、7つのグループが、フィールドで得た発見を発表した。発表内容には、リハビリ目的の高齢者の声、アメリカ人男性が語る西公園の魅力、毎日サッカー練習に来る親子の存在など、多様な視点から捉えられた西公園の姿が示された。他のグループの発表を聞くうち、若者たちの表情は真剣さを増していく。そして、各グループの発見が有機的に結びつくにつれて、西公園の抱える課題と、その裏側にある潜在的な魅力が、それぞれ具体的な像を結んでいった。このフィールドワークを通じて多角的に捉えられた西公園のリアルな現状は、今後のブランディング戦略を構築するための、欠かせない土台となるだろう。


      フィールドワークの果てに―。

      60分間のフィールドワークを通じて若者たちが得たのは、教室では決して得られない実体験と、多角的な気づきであった。西公園は、『近さ』『静けさ』『自然の豊かさ』といった普遍的な価値を持つ、人々に愛されている場所である。しかし、これらの魅力とは裏腹に、若者全員が直面した動かせない現実。利用者数の少なさと、若者の不在という事実だ。利用者層の偏りは、公園のもつ『価値』が特定の世代にしか届いていないことを示唆している。 緑の豊かさや落ち着いた魅力を持つこの場所に、なぜ若者は来ないのか。この根源的な問いは、プロジェクトの核心であり、若者たちが自分たちの手で未来を切り開くための、最も重要な出発点となるはずである。


      次なる定例会へ。歩みを止めない若者たち

      プロジェクトが目指すのは、西公園のブランディングに留まらない。若者が社会を自分ごととして捉え、自発的・自主的に行動できる人になることであり、ここに集まる若者たちは、自身のまちを見つめ直す確かなきっかけを掴みつつある。フィールドワークで捉えた視点は、これからの西公園ブランディングに大きく直結する。しかし、約2年間のプロジェクトは、まだ4回目を終えたばかりだ。ここからさらに、開園150年という長い歴史を持つこの西公園に、若者たちの新しい視点が加えられていく。西公園が持つ魅力、課題、そして可能性を、若者たちはもっと本格的に掘り下げていくのだ。

      そして西公園ブランディングプロジェクトというこのストーリーは今、ここ仙台市で、確かに動き出している。次なる舞台となる8月23日に開催される第5回定例会では、フィールドワークで掴んだ西公園利用者の『生の声』をもとに、彼らはさらに現状分析を進めていく。この熱意ある若者たちが、西公園、そして仙台のまちをどのように分析して変革をもたらすのか。若者たちは第5回定例会でも、プ西公園の新たな未来を創造する一歩を踏み出し続けるだろう。


      〈PROJECT REPORT〉 Archive

      #1始動日に見た熱きパッションと若者たちの第一歩 

      #2若者たちの本音が、西公園の可能性を切り拓く―。

      #3西公園vs美術館⁉若者たちによる本格的競合分析の全貌 


      Text:Yuki Suzuki
      Photo:kensuke Miura/ Yuki Suzuki

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