Project
2025/11/19
2025年10月18日、青葉区中央市民センターに28名の若者が想いを持っての集結をした。うち16名は初参加。今回から新たに東北大学1年11名、東北文化学園大学3年5名といった新たな顔ぶれを迎え、プロジェクトはまさに “ネクストフェーズ” へと突入しようとしている。
彼らが今向き合うのは、〈西公園ブランディングプロジェクト〉だ。2025年4月19日にキックオフしたこの挑戦は、仙台市青葉区若者社会参画型学習推進事業(以下、青葉区若者事業)史上初となる産学官連携のもと、前例なき取り組みとして動き出した。タッグを組んだのは、仙台市青葉区、株式会社BLUE SODA、そして東北福祉大学をはじめとする仙台市内の大学機関の三者。開園150周年を迎える西公園をブランディングすべく、若者が約2年間かけて主体的に取り組んでいる。第7回定例会となったこの日のテーマは、『課題定義』。これまでの分析結果を統合し、西公園が抱える本質的な問題の核心を定めるという重要な局面であった。会場には若者に加え、大学教授4名、仙台市職員2名も参加。世代や所属の枠を超えた総勢34名が、一つのワークショップに臨んだ。
本記事では、仙台の未来を担う若者の熱意と、白熱した議論から生まれた声を、ここにレポートする。

西公園ブランディングプロジェクトの第7回定例会は、前回までの学びの連続性を踏まえた、非常に重要な回となった。
第5回定例会まで取り組んだのは、マーケティングの基礎フレームワーク『3C分析』だ。自社(Company)、市場(Customer)、競合(Competitor)という3つの視点から、西公園を取り巻く環境を徹底的に調査・分析した。第6回定例会では、その情報を戦略に変えるため『SWOT分析』と『クロスSWOT分析』を実施。強み・弱み・機会・脅威を洗い出し、未来の戦略のロードマップを描き出した。そして迎えた第7回。集めた情報と分析結果を統合し、ブランドの羅針盤となる “解決すべき課題” を定義する最終段階へと進んだ。講師は前回に続き、株式会社BLUE SODA代表取締役の相澤総一郎氏(以下、相澤氏)が務めた。相澤氏は冒頭、この日のテーマを次のように示した。
相澤氏:「今日は、これまでの分析で得られた情報を全て洗い出し、若者の本質(インサイト)を探ります。そして、『How Might We...?(どうすれば私たちは...できるだろうか?)』という問いを設定し、解決すべき課題を具体的かつポジティブに定義します」
ワークショップは、『情報の棚卸し』、『インサイトの抽出』、『How Might We...?(以下、HMW)による課題の決定と磨き込み』という3ステップで進行した。
相澤氏からの話が終わると、いよいよワークショップは本格始動した。まずは、これまでの資料(競合分析、インタビュー記録、SWOT分析など)を見返し、各自が発見や気づきを付箋に書き出す作業に入る。そのあと、若者たちは意見をかわしながら、模造紙に貼り出された付箋を、公園に対する若者の『ペイン(不満・障壁)』と『ゲイン(喜び・期待)』に分けて整理していった。
約10分間の濃密なディスカッションを経ると、各グループの模造紙は色とりどりの付箋で埋め尽くされた。全グループの意見を集約すると、西公園のリアルな姿が鮮明に浮かび上がってきた。ペインは43件、ゲインは11件。最も多かったのは、ペインでは【目的・魅力】に関する意見で19件、ゲインでは【自然・環境】に関する意見で5件だった。

【目的・魅力】
『イベント以外に利用する目的がない∕イベント以外に楽しめるところが少ない∕イベントや目的がないと公園にはいかなさそう∕イベントの時もいかない∕西公園に行く目的がない∕やることの選択肢が少ない』
【アクセス】
『仙台駅から遠い∕一番町、国分町から遠い∕家か遠いと利用しにくい∕南北に分かれているのでアクセスしにくい∕意外とアクセスが悪い∕仙台駅などの中心地から遠い』
【設備・環境】
『遊具が少ない∕休憩できる場所が少ない∕ベンチなどがなく休めない∕天候に影響される∕日陰がない∕虫が多い』
【情報・認知】
『公園内に何があるかわからない∕情報が届かない∕西公園でやる行事が少ない∕よくも悪くも祭りの場所のイメージ∕イベントのイメージが強い』
【その他】『勾当台公園に人を取られている∕公園に行くなら違う場所にいく∕何もないところが広すぎる∕仙台駅で娯楽がすむ』
【自然・環境】
『広い∕静かで落ち着くところ∕季節の変化を感じることができる∕自然が豊か』
【活動・使い方】
『ランニングするにはよいところ∕花見∕散歩ができる』
【その他】
『交番がある∕歴史がある∕地下鉄が近い』
ペインとゲインを整理した後、若者たちはさらに議論を深め、最も本質的な要素から隠れた本音(インサイト)を言語化していった。抽出されたインサイトは全部で29件。その中でも、西公園の存在意義を問う【目的・魅力】に関するものが14件と最多だった。若者たちが突きつけたインサイトの生の声は以下の通りだ。
【目的・魅力】
『様々なモニュメントや豊かな自然が点在しているだけで一つの明確な目的が見いだせない/わざわざ目的がないのに歩いて西公園に行こうと思わない/エンターテイメント性がない/行くメリットがない/西公園周辺に行く目的がないから行かない/メディアテークに負ける/公園といっても魅力を感じない/公園そのものに魅力を感じていない/楽しいイメージがない/行く理由がない/公園に行く理由が普段から行かない/そもそも若者が公園に行って何をする/公園=憩いという考えにならない/西公園といえばこれというインパクトがなく、イメージがぼんやりしているから行先の候補にあがらない』
【アクセス】
『駅から遠く、コンテンツが少ないため行く目的がない/徒歩では遠すぎるし地下鉄使うほどの距離でもない/西公園は仙台駅から遠いのでそれでも行きたくなる理由がほしい/公園が遠いのに公園にあるものに魅力を感じない/移動が大変なわりに何もない、何をしたらいいのかわからない/仙台駅から離れていてわざわざ行こうと思わない』
【情報発信】
『イベントをやってもなじみのない内容、イベントの情報をしらないので行かない/若者が行きたくなるようなイベント、SNS発信が少ない』
【ライフスタイル】
『公園に行く時間がない/特別な予定がない限り、西公園よりほかの予定を優先する』
【その他】
『西公園に行くより仙台駅で何かするほうができることが多いので行かない/若者が求める娯楽がなく、仙台駅で済んでしまう/若者の娯楽が仙台駅や定禅寺通に集まっていて行かない/人気がなくて特に夜は暗くて不気味だから近寄りがたく感じる/近くの公園でいい』

休憩を挟んだ後、『HMW』による課題の量産に突入する。「ここからが本番です。質より量が重要です」と相澤氏。抽出したインサイトを元に、『どうすれば...できるだろうか?』というポジティブな問いを大量に考えるのだ。相澤氏は良い例と悪い例を示してくれた。悪い例は『若者向けのイベントをどう作るか?』。これでは解決策が限定的すぎる。良い例は『どうすれば私たちは、公園での何気ない瞬間が"最高の思い出”に変わり、思わずシェアしたくなるような体験をつくりだせるだろうか?』。いい例は問いそのものが、創造性を喚起する。相澤氏からの説明後、ブレインストーミングが始まった。学生たちは様々なHMWを生み出していった。
『どうすれば私たちは、公園のイメージアップをして集客できるだろうか?』
『どうすれば私たちは、西公園で魅力ある体験をつくることができるだろうか?』
『どうすればどうすれば私たちは、ただの広い公園がアクティビティのある若者がワクワクする公園にできるだろうか?』
『どうすれば私たちは、若者が気軽に日常的に行くようにできるだろうか?』
『どうすれば私たちは、若者が遊びに行きたいと思える目的を作れるだろうか?』
『どうすれば私たちは、既存のものを活用して訪れた人がSNS等で発信したくなる公園にしていけるだろうか? 』
『どうすれば私たちは、今までの西公園のイメージを変え、人に勧めたくなるような話題性をもったシンボル・魅力をつくりだせるだろうか?』
最後に、各グループごとに生みだしたHMWの中から、最も可能性を秘めた『解くべき問い』を絞り込み、発表に臨んで今回のワークショップは終了した。各グループが導き出したその問いこそが、150年の歴史を持つ公園の未来を切り拓く、若者たちの羅針盤である―。

2時間半のワークショップを終え、学生たちにアンケートを実施した。定例会満足度は『とても満足』22人、『満足』4人と、9割以上の若者が高い評価を示した。しかし、この日の真の価値は、ただの数字では測れない。公園の未来を真剣に考えた若者たちの本質的な変化は、アンケートに記された ”彼らの生きた言葉” の中にあるのだ。
「今回のグループワークや発表では、『通り道』という言葉が印象に残った。通過の意味がグループによって、プラス面にもマイナス面にもなることが分かり、面白かった」
「公園自体ではなく通り道を魅力的にしたらいいのではないかという意見が出て、正しいかどうか分からないが面白い意見だと思った」
「若者をを私がに変えて考えてみるという先生の話が印象に残りました」
「若者はじゃなく、自分はで自分事として考えるのが大切だと思った」
「今日は自分のこととして考えるということを学んだので次からは自分のこととして西公園にどうやったら行きたいと思うのかこれからもしっかりと考えていきたいと思いました」
「グループワークで西公園の課題として、情報発信やアクセス面の課題がでたのですが、全てが西公園の魅力に繋がっているのではないかという意見にまとまり、自分の考えが言葉として明確になりました。若者が魅力だと思うことや興味を持つものは人それぞれ異なっているという面が難しい点であると思いますが、少しでも多くの人が興味を持てるような魅力を考えていきたいと思いました」
「どのグループも、課題の定義とその思考課程を論理的に考えていて、納得できる部分も多く聞いていて面白かった。お金を使って何か作るというよりもあるものを活かす、という考えが印象的だった。新しいものに頼らず今の公園の魅力を引き出すことも重要だと気づけた」
「今まで、西公園でイベントがたくさん行われていることを、メリットとして捉えていて若者の来る理由だと思っていたが、同じグループの学生が、イベントの内容が若者向けでないという点を指摘していて、ただイベントをするのではなくその内容を若者目線からしっかり考えること、またイベントについて若者に知ってもらう方法などの改善点がわかったのが印象的だった」
この日、会場で起きていたことは、単なるワークショップという域を超えていた。異なる大学、異なる学年、異なるバックグラウンドを持つ若者たちが、“仲間”として一つのテーマに向き合い、本気の議論を交わしていたのだ。43のペイン、11のゲイン、29のインサイト、そして7つのHMW。これらは全て、若者たちが西公園と真摯に向き合った証である。この数字の裏側には、一人ひとりの熱い思考と対話が隠されている。そして、青葉区若者事業の目的は『若者が社会を自分ごととして捉え、自発的・自主的に行動できる人になってほしい』というものだ。第7回定例会の様子は、その目的に向かって確実に前進していることを証明した。
プロジェクトが完了する2027年、西公園のブランディングがどうなっているのか。そして、このプロジェクトに関わった若者たちと社会の関係性がどのように変化しているのか。その答えは、まだ誰も知らない。しかし、確かなことがある。この日会場で笑顔を絶やさず議論していた28名の若者たちは、すでに社会を動かす当事者になり始めているのだ―。
>#6本格的フレームワークで西公園の未来をデザインする若者たち
Text:Yuki Suzuki
Photo:kensuke Miura
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